1996 Fiscal Year Annual Research Report
紙の表面ラフニングに関与する内部応力の生成と解放に関する研究
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08760158
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江前 敏晴 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40203640)
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Keywords | 紙 / 微塗工紙 / 表面ラフニング / 平滑度 / 表面粗さ / 内部応力 / 応力緩和 / カレンダー |
Research Abstract |
紙の表面ラフニングに関与すると考えられている内部応力に方向性という概念を導入したことが本研究の新しい視点である。従来から紙の内部応力といえば乾燥時の面方向の張力によって生じる面方向の内部応力を意味する。この内面内部応力が大きいものは、引張応力緩和試験での経過時間の対数に対する張力の減少速度が小さくなる(Kubat法)が、面内内部応力は厚さ方向の不均一な変異を意味するラフニングには無関係で、同様な測定法を厚さ方向の圧縮応力緩和に適用すれば面外(厚さ方向の)内部応力を求めることができ、ラフニングはそれに関係があるのではないかとの仮設を立てて検証を行った。 カレンダリングにより、乾燥時の張力によって生成し引張応力緩和試験によって求められる面内内部応力が紙に蓄えられるのかをまず検討した。市販の中質紙を用いた。カレンダリング処理では、内部応力は変化しなかった。また、水へ侵漬してからカレンダリングを行い、未処理試料と同程度の平滑度とした試料(内部応力は未処理試料よりはるかに低く、ほぼ解放し切っている)を再度水に侵漬して平滑度の低下を調べたところ、未処理試料と同程度の平滑度の低下が観察された。これは面内内部応力の解放量に関係なくラフニングが起きることを示す。 次に中質紙の厚さ方向の圧縮応力緩和試験を行いカレンダリング処理の有無によって挙動の違いを調べたところ、カレンダリング処理がある場合は緩和速度が小さかった。これは面外(厚さの方向の)内部応力の蓄積量の違いを示唆するものと考えられ、仮説が正しかったことを示す。従って、表面ラフニングの発生程度は厚さ方向の面外内部応力に関係しているという結論が得られた。今後、圧縮応力緩和曲線の意義、遷移のつぶれとの関係などの理論的考察が課題として残された。
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