1996 Fiscal Year Annual Research Report
細胞融合による高収率パルプの光褪色抑制能を有する菌の作出
Project/Area Number |
08760167
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
伊藤 和貴 愛媛大学, 農学部, 助手 (50253323)
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Keywords | 機械パルプ / 機械パルプの光褪色 / メトキシ-p-キノン / パルプの酵素処理 / 細胞融合 / アイソザイム |
Research Abstract |
1 機械パルプの光褪色抑制能の高い木材腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumとStereum roseumの細胞融合により数種の融合菌を作出した。これらの菌を還元性の指標色素を利用したスクリーニング法で2種の菌を選抜した。この2種の融合菌のアイソザイム分析を行った結果、親株P.chrysosporiumとS.roseum由来のバンドの他に、両親株由来ではないアイソザイムが出現した。融合菌から得られた菌体外粗酵素液とメトキシ-p-キノンの反応性、およびパルプの粗酵素処理を行った結果、親株より高い光褪色抑制能(抑制率42%)を持つことが見出されたが、ここで得られた融合菌の安定性は継代を重ねるごとに抑制能が著しく低下した。親菌の安定性が必要と考えられた。そこで、安定した親菌を天然からスクリーニングした結果、高い光褪色抑制能(抑制率70.1%)を有する糸状菌を1種見出した。この菌は何代継代を重ねても抑制率を保持していた。 2 1で見出した天然から得られた1種の菌の菌体外粗酵素液から酵素の分画を検討した。硫安分画、イオン交換クロマトグラフィーで6フラクションに分画した。Fr1からFr6についてメトキシ-p-キノンとの反応性、およびパルプ処理を行った結果、分画された酵素はいずれも色戻りに関与することが見出された。なかでもFr3が70%の抑制率を示した。また、これら分画した酵素群に補酵素(NADPH_2、s-アデノシルメチオニン)を添加してパルプ処理すると光褪色抑制率が上昇することが見出された。以上から機械パルプの光褪色抑制には数種の酵素が関与することが推測される。 3 2で分画された酵素について色戻りに寄与する官能基を含むリグニンモデル化合物(グアイアシルグリセロール-β-コニフェリルアルデヒドエーテル)との反応性については現在検討中である。現在、この酵素の精製を進行中である。今後、単離精製した酵素と色戻りに寄与する官能基を含むリグニンモデル化合物との反応性を検討し、光褪色抑制のメカニズムを明らかにする予定である。
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