1996 Fiscal Year Annual Research Report
輸入青果物の増大ヒスーパーにより物流再編に関する研究
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08760213
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
尾ざき 亨 酪農学園大学, 酪農学部, 講師 (70275486)
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Keywords | 輸入野菜 / スーパー / 物流 / 卸売市場 |
Research Abstract |
本研究の課題は、急増する輸入農産物の中の生鮮野菜を事例として、スーパーを中心とする小売資本の視点から、その物流システム再編の仕組みを明らかにすることである。 考察分析の結果、以下新知見を得た。 第1に、特に90年以降、野菜輸入が急増しつつあるが、なかでも生鮮野菜の著しい輸入増加、品目の多品目化、中国からの輸入が急増していることが解明された。96年には、野菜の輸入総領が280万トンに達し、国内生産量の20%を占めるに至った。近年の輸入構造は、これまでの不足期、端境期、投機など一時的な輸入構造から周年恒常的輸入構造に転化しつつあるという新知見が得られた。 第2に、スーパーの輸入野菜の取り扱いは、現在のところ約1〜2割程度であるが、輸入技術や鮮度技術の高度化により、品質が改善されれば、されに増えていくと考えられる。輸入野菜仕入先は、卸売市場、卸売市場外(中卸し、商社、直接輸入、開発輸入)があるが、ビッグスーパーほど卸売市場以外からの仕入れ割合が高いことが明らかにされた。輸入野菜の取引方法は、ほとんどが相対取引である。特に価格形成は、輸出国の港を出る段階で決定され、その後ほとんど変更がない。従って、スーパーは、販売日の売価をより早く決定しうることができ、販売計画を組やすのも輸入野菜をとり扱う理由であることが明らかにされた。 第3に、輸入野菜の物流に関しては、輸出国から日本までの輸送方法は、船便と航空便とがあり、日本の港までの輸送時間は、アメリカの場合、船便で約1週間から20日間である。また近年高単価野菜の航空による輸送割合が増えている。輸入野菜の入港先は、横浜、東京、神戸の3港で全体の約半分を占め、国内の各地域の需要者には、そこから保冷トラックで輸送される。しかし近年野菜輸入が増加するに従って、入港先の分散化が進展していることが明らかにされた。また、北海道内への物流は、本州からの陸送が中心であるが、品目によっては道内の港への直接入港が増大していることが明らかにされた。 第4に、輸入野菜の国内の物流は、市場外流通が中心であるが、近年卸売市場での輸入野菜の取り扱いも増えつつある。特に、他方のスーパーにとっては、現在のところ卸売市場での仕入れ割合が高い。札幌中央卸売市場における輸入野菜取扱は、95年では野菜取引全体の約2%であるが、品目によっては5から7割を占めているものもあり今後ますます増えることが予想さる。その取扱も周年化しつつあるという新知見が得られた。 以上の新知見より、スーパーによる輸入野菜取扱の増大は、これまでの卸売市場中心の流通や価格形成方法に大きな影響を与えつつ、卸売市場機能の転換をもたらしつつある。さらには国内産地を国内産地間競争からも国際産地間競争に巻き込み、野菜産地の再編を押し進めている。結局、スーパーの輸入野菜取扱増大は、卸売市場や国内野菜産地の再編を進めることにつながっているのである。今後、輸入急増に対する卸売市場や国内野菜産地の対応策を早急に解明することが必要であるが残された今後の課題としたい。 平成8年度の文部省科研費奨励研究の研究成果は、逐次本年度の学会、学術雑誌で発表していく。
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