1996 Fiscal Year Annual Research Report
インターロイキン-2遺伝子導入マウスにおける小脳病変の形成機序に関する実験的研究
Project/Area Number |
08760266
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 享史 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助手 (90261338)
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Keywords | インターロイキン-2 / トランスジェニックマウス / 小脳病変 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
ヒトIL-2 (hIL-2)ゲノムDNAを導入して作製したトランスジェニックマウス(hIL-2マウス)を免疫組織化学的、分子生物学的に解析し、以下の知見を得た。 1.hIL-2マウスの小脳病変の免疫組織化学的検索 5週齢のhIL-2マウスの小脳凍結切片を抗Thy-1抗体を用いた酵素抗体法によって検索したところ、クモ膜下腔に集簇するリンパ球のうち多くのものはThy-1陽性を呈した。 2.hIL-2発現細胞の同定 9日齢のhIL-2マウスの小脳パラフィン包埋切片に対し、hIL-2遺伝子を特異的に増幅するプライマー対を用いたRT-in situPCR法を施行した。hIL-2mRNAの5'末端を増幅するプライマー対と、第2エクソンから第3エクソンにわたる領域を増幅するプライマー対の2種類を用いて解析を行った結果、いずれのプライマー対を用いた場合においても、プルキンエ細胞層に限局して弱いシグナルが観察された。クモ膜下腔に浸潤している少数の炎症性細胞にシグナルは認められなかった。 3.小脳において発現しているhIL-2mRNAの解析 hIL-2マウス小脳mRNAからRT-PCR法によって第1イントロンを含んだhIL-2primary transcriptを増幅した。増幅したcDNA (293bp)をpGEM-4Zベクターにクローニングし、ジデオキシ法による塩基配列の解読を行った。その結果、第1イントロン両端のスプライスドナー部位、アクセプター部位に変異は認められず、塩基置換によるスプライシングの障害の可能性は否定された。 4.受身移入の成立の検討 hIL-2マウス末梢血白血球から単離した末梢リンパ球をConcanavalin A刺激の後に同系マウスへの腹腔内接種を行ったところ、症状再現は認められなかった。 以上の結果から、hIL-2マウスの小脳において、導入遺伝子はプルキンエ細胞で発現している事が示唆された。加齢に伴って出現するリンパ球およびマクロファージ浸潤を主体とする炎症性変化は、プルキンエ細胞において微量に発現するhIL-2により惹起される現象であると解された。
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