1996 Fiscal Year Annual Research Report
ラット皮膚から単離したフィブリリン分子の細胞接着能の解析
Project/Area Number |
08770017
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
尾野 道男 横浜市立大学, 医学部, 助手 (50264601)
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Keywords | フィブリリン / 細胞外マトリックス / 細胞接着 |
Research Abstract |
フィブリリンは、1986年、ヒト羊膜を抗原として得られた、モノクロナル抗体によって、Sakaiらによって同定された分子量35万の糖蛋白である。この抗体は、多数ある細胞外基質の中で、コラゲナーゼ耐性の直径20nm以下の"マイクロフィブリル"と呼ばれている線維の中の、弾性線維の周辺部に存在する、直径10nmで、枝分れがなく、横断面が中空のド-ナツ状に見える特徴的な線維を認識するため、フィブリリンと名付けられた。その後、フィブリリンは単離され、シャドウイングにより分子形態にも明らかになった。1990年代にはいり、ヒトのフィブリリンの塩基配列が明らかになったが、これと同じ時期に、1896年、Marfanにより報告された、マルファン症候群(先天性の結合組織異常症)の原因となる遺伝子も同定され、それがフィブリリンであることが明らかになったため、フィブリリンは一躍、脚光をあびることになった。本研究では、フィブリリンの細胞接着能を解析するとともに、フィブリリンに対する抗体の作成およびプローブの作成を行い、フィブリリン蛋白の局在およびmRNAの発現と細胞接着との相互関係を明らかにすることを目的とした。我々は、マウス皮膚のcDNAより、フィブリリンのN末部位、C末部位、RGD部位のプローブを作成した。得られたプローブを元に、in situハイブリダイゼーションを行い、フィブリリンmRNAの発現については解析中である。また、このプローブをpETベクタに組み込み、大腸菌によりこれらの蛋白を強制発現させた。得られた各部の蛋白を免疫原として、フィブリリンの各部位に対する抗体を作成している。本年度に、フィブリリンのRGD部位がインテグリンαvβ3相互作用することを示唆する報告がされたが、フィブリリンの突然変異とマルファン症候群との関係は未だ明らかになっていないばかりでなく、フィブリリンの細胞接着能、細胞外基質としての役割など、基本的な性質に関しては、未だ明らかでないことが多い。
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