1996 Fiscal Year Annual Research Report
リポ多糖(LPS)によるマウスマクロファージ及び線維芽細胞の活性比に関する研究
Project/Area Number |
08770198
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
冨永 薫 自治医科大学, 医学部, 助手 (20265242)
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Keywords | リポ多糖 / マクロファージ / MAPキナーゼ / NF-κB |
Research Abstract |
昨年度我々が作製したLPS応答性胎児線維芽細胞株(MEF.He)およびLPS低応答性胎児線維芽細胞株(MEF.HeJ)を、LPSを含む種々の刺激物質で刺激し、IL-6の発現を指標に、両細胞株の応答性を調べた。MEF.He細胞株では、LPSのみならずマウスマクロファージにおいてLPSと同様な作用を示すことが明らかとなっているタキソ-ルや細胞内セカンドメッセンジャーの一つであるセラミドに応答してIL-6mRNAを発現した。一方、MEF.HeJ細胞株では、LPSのみならずこれらの刺激に不応答で、IL-6mRNAを発現しなかった。陽性コントロールのIL-1α刺激では、両細胞株共に応答し、IL-6mRNAを発現した。MEFは、マクロファージに発現し、LPSレセプターの一つであると考えられているCD14分子を発現していないので、CD14を介さないLPSシグナル伝達系の存在が示唆された。また、チロシンキナーゼ阻害剤を用いた実験から、MEF.HeにおけるLPSシグナル伝達系にもチロシンキナーゼが関与することを明らかにし、MEFのLPSシグナル伝達系はマクロファージのそれと共通性が高いことが示唆された。 LPSで細胞を前処理すると、2回目のLPS刺激に対して著しく不応答になることが知られており、LPSトレランスとよばれている。マウス腹腔マクロファージを用い、LPSトレランス状態にある細胞のLPSシグナル伝達系を調べた。LPSレランスマクロファージでは、3種のMAPキナーゼ(MAPK,p38,JNK)全ての活性化が抑制されていた。また、MAPKの上流に位置するキナーゼであるRaf-1の活性化も抑制されており、これらMAPキナーゼファミリーの上流のキナーゼがLPSトレランスでは抑制されることを明らかにした。またLPS刺激により活性化される重要な転写因子NF-κBの活性化もLPSトレランスマクロファージでは抑制されていた。以上の結果は、LPSトレランスがLPSシグナル伝達系を構成するかなり上流に位置する分子の抑制により引き起こされることを強く示唆していた。
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