1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08770272
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 秀樹 岡山大学, 医学部, 助手 (50243457)
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Keywords | E型肝炎 / 災害 / 疫学 / ネパール / シンガポール / AMDA / 新興感染症 / 在留邦人 |
Research Abstract |
本年度は、(1)海外在留邦人におけるE型肝炎の感染状況、(2)災害の被災地における肝炎の流行状況に関する調査研究、(3)E型肝炎の流行状況に関する文献的考察を実施した。 (1)シンガポール在住の邦人を対象にE型肝炎の罹患状況を調査したところ、肝機能障害のあるなしに関わらず168名中8.9%がIgG型抗体であった。感染の経路として水系感染が疑われた。これらの例は多くは不顕性感染であるが、災害時のように飲料水が汚染される場合にはE型肝炎の流行がおこる可能性が示唆された。 (2)1993年に大規模な水害に見舞われたネパール国東部の住民における水害の被災歴・健康問題、肝炎に関連した病歴等の調査をAMDAと共に実施した。これらのデーターを疫学解析ソフト(Epinfo ver.6)で基本統計量(全体のE型肝炎抗体陽性率、災害被災歴の情報など)を解析した後、SPSS(Statistical Package for Social Science ver.6.1J)で疫学的解析を実施した。この地区におけるE型肝炎抗体陽性率は6.7%(6/93)で、E型肝炎感染についてのリスクとして、低い社会・経済状況・水害の被災歴等が考えられた。 (3)災害と感染症情報に関するインターネット、文鎮、国際機関からのレポート等の情報では、1995-96年にかけて中国、ラオス、ベトナムでは水害の後に小規模なE型肝炎の流行が報告されたが、96年9月におきたスーダンでの水害では報告されなかった。また、1995年11月におきたフィリピンの台風、1996年5月のバングラデシュの竜巻災害の後には肝炎の流行は見られなかった。これらの研究から、災害の種類、規模、災害発生時期の気候が災害後のE型肝炎発生の有無を決定する要素となり得ることが示唆された。 災害医療・新興感染症の観点からE型肝炎に関するサーベイランスが今後とも必要である。
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