1996 Fiscal Year Annual Research Report
高脂血症の素因スクリーニング指標の一つにインスリン抵抗性候補遺伝子が利用できるか
Project/Area Number |
08770297
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Research Institution | Ehime College of Health Science |
Principal Investigator |
鳥居 順子 愛媛県立医療技術短期大学, 臨床検査学科, 助手 (00249608)
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Keywords | 血清脂質値 / DNA多型 / インスリン抵抗性 / 生活因子 |
Research Abstract |
本研究の大きな目標は血清脂質の種々の素因別に高脂血症ひいては動脈硬化症の危険度を予測し、各グループの生活指針を導き出す事にある。今年度は、この目標達成上「素因として何を指標に使うか」「どんな生活項目に気をつけるか」を明らかにするためのステップとして、「インスリン抵抗性」の候補遺伝子を、素因スクリーニングの指標として新たに追加した。具体的にはインスリン受容体基質1(IRS-1)遺伝子972変異を、PCR法によりDNAを増幅後、制限酵素により切断し、電気泳動法により同定した。 これまで血清脂質値への素因と生活因子の関与の検討を行ってきた対象者のうち、アポ蛋白濃度などデータのより充実している松山市近郊の農山村A地区住民88名について、まずIRS-1遺伝子多型を同定した。変異型のホモ保有者はなく、ヘテロ保有者もわずか2名(2.3%)であったため、この集団に関してはその後の多変量解析を断念した。次いで、松山市近郊の農村B地区住民178名についてIRS-1遺伝子多型を同定した。変異型のホモ保有者はなく、ヘテロ保有者は7名(3.9%)であった。この集団について既報(第64回日本衛生学会)の血清脂質値についての重回帰式(素因としてはアポB遺伝子VNTR多型を使用)の説明変数に、IRS-1遺伝子多型を加えて検討した。総コレステロール値とHDLコレステロール値は175名、中性脂肪値とLDLコレステロール値は空腹時採血の124名の解析を行った。各重回帰式にIRS-1遺伝子多型を加えても、どの式にも採択されなかった。また、アポB遺伝子VNTR多型の項目を除いた上でIRS-1遺伝子多型を加えても採択されず、VNTRの項目を除いた分だけ重相関係数が小さくなった。今回指標として試みたIRS-1遺伝子972多型はこの集団では高脂血症の素因スクリーニングには有用とはいえず、アポB遺伝子VNTR多型の方が有用であった。
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