1996 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトIschemic Preconditioningにおける循環作動物質の役割
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08770508
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
小原 幸 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (80275198)
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Keywords | ischemic preconditioning / 循環作動物質 |
Research Abstract |
我々はこれまで、ラットを用い、ischemic preconditioning (IP)の機序の研究を行ってきた。今回は、ヒトでのIPにいかなる循環作動物質が関与するかを検討した。 〈対象・方法〉本学で左前下行枝近位部病変に待機的PTCAを施行した患者を対象とし、IPを模擬するプロトコールとして一分間のballoon inflationを2回行い、inflation前後の体表面12誘導心電図ΣSTの計測、及び各種循環作動物質の測定を行った。〈結果〉ΣSTは一回目inflation時9.0±3.5mmであったが、二回目inflation時5.7±4.8mmと有意に減少した。患者の自覚症状も二回目inflation時には、全例において胸痛の軽減が認められた。しかし各種循環作動物質の計測結果は、ブラジキニン産生量が-42.0±22.4pg/ml (balloning前)、-52.0±29.3pg/ml(1回目inflation後)、-37.6±13pg/ml(2回目inflation後)、エピネフリン産生量が0±0ng/ml (balloning前)、0.26±0.25ng/ml(1回目inflation後)、0.12±0.09ng/ml(2回目inflation後)、ノルエピネフリン産生量が0.2±0.1ng/ml (balloning前)、0.48±0.63ng/ml(1回目inflation後)、0.33±0.48ng/ml(2回目inflation後)、アデノシン産生量が5.1±10.5pmol/ml (balloning前)、6.8±12pmol/ml(1回目inflation後)、-1.9±8.6pmol/ml(2回目inflation後)と、いずれも有意な増加を認めなかった。一分間という比較的短時間の虚血によっても心電図上、もしくは自覚症状からはIP様虚血軽減作用が認められたが、各種循環作動物質に有意な変化は認められなかった。動物実験上はこれらの物質とIPとの関与が報告されていが、今回の検討では、IPを上記循環作動物質との関連を示唆する結果は得られなかった。原因として、deflation直後の冠静脈洞採血が、虚血領域からの灌流血を充分に反映していない可能性、また虚血部組織内と冠静脈洞血液内での循環作動物質濃度に差異のある可能性もあり、inflation時間の延長も含め、今後さらに検討を要すると考えられた。
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