1996 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患における精神症状発症機序の分子生物学的解明(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症の遺伝子異常と遺伝子発現について)
Project/Area Number |
08770774
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
上野 修一 愛媛大学, 医学部, 助手 (80232768)
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Keywords | 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 / 遺伝性神経変性疾患 / CAG伸張病 / 選択的神経細胞死 / 遺伝子転写 / メッセンジャーRNA / 逆転写酵素-PCR |
Research Abstract |
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)は、日本人に多い常染色体優性遺伝性神経変性疾患であり、12番染色体短腕にあるDRPLA遺伝子のCAG繰り返し配列が異常伸張することによって生じる。この遺伝子変異と臨床症状との関連性については確認されたが、選択的神経細胞死が起こる分子的機構については未だ不明である。今回の私の研究では、本疾患の選択的細胞死に遺伝子転写系が関与していないかどうかを調べる目的で、DRPLA患者7名及び対照患者10名の剖検組織を用いてDRPLA遺伝子mRNAの発現を解析した。インフォームドコンセントを得た死亡患者の剖検組織からRNAを精製し逆転写酵素でDNAを作成したのちに、DRPLA遺伝子mRNA量をβ-アクチンの発現量を指標として調べた。その結果、1)ゲノムDNAのCAG繰り返し回数は細胞間、組織間で異なっており、脳では特にその繰り返し回数が多いことがわかっているが、その繰り返し回数は、ゲノムDNAとmRNAではほとんど同じでありよく保存されていた。2)DRPLAmRNAは諸組織で広く発現しており、CAG異常伸張対立遺伝子と正常対立遺伝子の発現量に差はなかった。3)DRPLAおよび対照患者脳では、共にDRPLAmRNAの発現量は他の組織に比べて高かった。4)DRPLA及び正常対照患者患者間のDRPLAmRNAの発現量の差を調べるために、4つの脳部位を用いてその発現量を比較したが、有意差を認めなかった。以上のことから、DRPLA遺伝子のCAG繰り返し配列の異常伸張はDNAからRNAにいたる転写段階では病的意義を与えず、DRPLAにおける選択的細胞死は、遺伝子転写以後の過程で起こるものと推定された。
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