1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08770968
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
木村 哲也 福井医科大学, 医学部, 助手 (50195369)
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Keywords | 虚血再潅流障害 / 一酸化窒素 / フリーラジカル |
Research Abstract |
【目的】NOが虚血再潅流後に果たす役割をフリーラジカル産生、肝障害、肝組織血流量の点から検討した。 【方法】SD系雄性ラットをコントロール(無処置)群とN-nitro-L-Arginine(LNNA:NO合成酵素阻害剤、7.5mg/kg)投与群の2群に分けた。ネンブタール麻酔下に開腹し、スピントラップ剤である4-POBNを投与した後に肝正中葉と左葉に流入する門脈、肝動脈、胆管を一括遮断し、70%部分肝虚血を行った。60分の虚血後再潅流0分、10分の時点で、肝左葉を摘出し、肝内に産生されたフリーラジカル(POBN adduct)の量を電子スピン共鳴装置(ESR)にて測定した。同時に肝上部下大静脈より採血し、血清GOT,GPT,LDH値を測定した。また、レーザードップラー血流計を用いて経時的に肝組織血流量を測定した。 【結果】LNNA群は虚血前の時点から肝組織血流量が有意に低値であった。肝虚血後再潅流0分の時点では測定されたPOBN adduct、血清GOT,GPT,LDH値ともに各群間に差を認めなかった。しかし、10分間の再潅流後にはコントロール群では69.5±7.0(nmol/g liver)(mean±SEM)のPOBN adductの産生が認められたのに対してLNNA群では43.0±2.4(nmol/g liver)と有意に抑制された。POBN adductの超微細分裂定数はaN=14.9-15.1(G)、aHβ=1.9-2.0(G)であり、これは脂質ラジカルであると考えられた。肝組織血流量は再潅流後もLNNA群は有意に低値であった。しかし、GOT,GPT,LDHは再潅流後も両群間で有意差を認めなかった。 【結論】NOの合成を阻害したことによって虚血前から肝組織血流量は有意に低下しており、再潅流後の肝組織血流回復も有意に遅延した。従ってNOは強い血管拡張作用を持っていることが明らかとなった。また、フリーラジカルの産生低下は血管収縮による酸素供給量の低下によって起こったと考えられた。
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