1996 Fiscal Year Annual Research Report
持続洗浄法に対するPovidone-iodine Solutionの応用について
Project/Area Number |
08771164
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
久賀 養一郎 久留米大学, 医学部, 助手 (80268911)
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Keywords | MRSA / 持続洗浄 / ポビドンヨード / 骨関節感染症 / 組織毒性 / 動物実験 |
Research Abstract |
多剤耐性菌やMRSAによる骨関節感染症に対して、我々はPovidone-Iodine(以下PVP-I)100倍希釈液による特続洗浄法を施行してきた。PVP-Iによる持続洗浄の安全性に関する報告はなく、今回動物実験にてPVP-Iの局所刺激性および障害性試験を施行した。過去の研究によれば、培養細胞を用いた実験では細胞レベルでのPVP-I毒性は使用する濃度と直接比例しており、5%液で線維芽細胞の遊走能、線維芽活性能を有意に抑制するが、1%液の場合は細胞の生育性や化学走性を抑制することはないと報告されている。そこで、PVP-I、HIBITANE(gluconate solution(以下G-C)10倍希釈液による持続洗浄で膝関節周辺組織に対する局所刺激性、障害性試験を家兎を用いて実施した。 結果は、PVP-Iを持続洗浄に用いた場合、皮膚に極軽度の刺激性が認められたが生食群でも同様にみられ、刺激性はないと思われた。筋肉、関節内に明らかな変性所見はなく、組織学的にも炎症細胞浸潤や壊死を示す所見はなかった。一方、G-Cを用いた持続洗浄では組織学的に筋線維の壊死所見がみられ、洗浄時間が長くなると変性が進む傾向があり、G-Cは長時間生体組織に接触させると細胞膜が障害され、細胞質成分の不可逆的漏出の結果、細胞が壊死する可能性か示された。一方PVP-Iは生体刺激性を有するヨウ素が巨大分子のポリビニルピロリドンの中に包括され結合し、長時間接触させてもこの化学構造のため生体刺激性が極めて低かったものと思われた。実際の臨床では100倍希釈液でMRSAに対する殺菌作用は十分であり、その場合の関節および周囲組織に対する影響はほとんどないものと推察された。今回の実験結果よりPVP-Iを希釈し持続洗浄に用いたり、術中術後の洗浄液とした関節内に用いても安全に使用できると思われた。
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