1996 Fiscal Year Annual Research Report
一過性脊髄虚血後の遅発性脊髄傷害の機序に関する研究
Project/Area Number |
08771195
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松本 美志也 山口大学, 医学部・附属病院, 講師 (60243664)
|
Keywords | 脊髄虚血 / グルタミン酸 / 遅発性神経障害 |
Research Abstract |
家兎一過性脊髄虚血モデルを用い、後肢運動障害の進行状況と脊髄虚血後の脳脊髄液中のグルタミン酸濃度を経時的に測定し、脊髄虚血後の神経障害におけるグルタミン酸の関与について検討した。 【方法】イソフルラン麻酔下に家兎の第4、第5腰部脊椎間よりくも膜下腔にマイクロダイアリシスプローベを挿入した。3〜5日後に、プローベ挿入による脊髄損傷がないことが確認された家兎で実験を行った。イソフルラン(1%)麻酔下に経後腹膜的に左腎動脈直下の大動脈を露出し、大動脈をテ-ピングした。マイクロダイアリシスを開始し(1サンプル10分間採取)、Baselineサンプルを採取後、一過性脊髄虚血侵襲を加えた。虚血時間は0分(Sham群n=2)、20分(20分群n=9)、30分(30分群n=4)とした。虚血中、再灌流後6時間までダイアリシスを行い、その後、創を閉じて家兎を覚醒させた。神経学的所見を2日間観察し、再灌流24時間、48時間時にもマイクロダイアリシスを行った。グルタミン酸濃度は虚血前値を1としたときの相対値(平均値±標準偏差)で表わした。 【結果】グルタミン酸濃度は20分群では虚血10分、20分が1.9±0.7*、2.2±1.2*、再灌流2時間、6時間、24時間、48時間が0.7±0.4、0.7±0.8、0.5±0.4、0.6±0.6であった。30分群では虚血10分、20分、30分が1.8±0.7*、2.1±0.7*、2.0±0.8*、再灌流2時間、6時間、24時間、48時間が0.6±0.4、0.6±0.4、0.8±0.6、1.4±0.9であった。Sham群では虚血10分、20分、30分が、1.0±0.1、0.9±0.1、0.9±0.1、再灌流2時間、6時間、24時間、48時間が1.0±0.1、0.8±0.2、0.4±0.1、0.2±0.1であった。(*:p<0.05)20分群では5羽が麻酔覚醒直後よりの脊髄障害を生じた。4羽が遅発性脊髄障害を生じたが、神経学的所見の悪化に随伴するグルタミン酸の濃度変化は明らかではなかった。ただし、sham群で再灌流後24時間、48時間のグルタミン酸濃度が低下しているので、透析効率の経時的劣化が影響している可能性がある。 【まとめ】一過性脊髄虚血により脳脊髄液中のグルタミン酸濃度は一過性に約2倍に上昇することが判明した。再灌流6時間まではグルタミン酸濃度の再上昇などの変化は見られなかった。遅発性神経障害の発生した家兎でも、神経学的障害の進行とグルタミン酸濃度の経時的変化に明らかな関連は見い出せなかった。一酸化窒素代謝産物に関しては、現在研究進行中である。
|