1996 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血に伴う遺伝子発現の変動探求ならびに脳保護、脳蘇生方法の形態学的評価法の確立
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08771220
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
松田 知之 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (30281265)
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Keywords | 脳虚血 / 低体温 / 海馬 / Immediate early gene / アポトーシス |
Research Abstract |
脳細胞は低酸素状態により障害されやすいが、すべての細胞が同じように障害されているわけではなく、特に障害されやすい細胞群が存在する。しかも細胞群により障害が認められる時間が異なる。これら現象の機序の解明は、脳保護、脳蘇生における治療方法の究明にも結び付く。今回我々低体温による脳保護作用の解明を試みるにあたり、in situ hybridization法を用いimmediate early geneにより、これまで細胞構築上は変化が認められないとされてきた脳虚血後早期の時点から遺伝子レベルでの変化を追及した。 (1)脳保護に臨床的に有効であるとされている軽度の予防的低体温管理下での脳虚血モデルをラットを用いて作成した。脳保護、脳蘇生モデルで、脳虚血再灌流後に伴う早期からのc-fos、zif/268遺伝子発現がどのように影響するかをin situ hybridization法を用い組成化学的に調べ、画像解析にて検討した。常温虚血群では再潅流後30分で海馬歯状回に、60分でCA1, CA3領域にc-fos遺伝子の著明な発現をきたした。正常対照群および軽度低体温下虚血群では海馬において再灌流60分後もc-fos遺伝子の発現をみとめなかった。zif遺伝子については、歯状回に虚血後の著明な発現をみたがこれも軽度低体温下では発現が抑制されることを明らかにし、1996年度の日本集中治療学会、日本解剖学会総会において報告した。 (2)遅発性神経細胞壊死が形態的に観察される再灌流後3から7日間の長期生存モデルで、脳蘇生による経時的な変化との比較検討を行った。低体温による神経細胞保護効果は34℃の軽度低体温管理にてみとめられ、また常温虚血で認められたアポトーシスによる神経細胞死が低体温管理により防ぐことが可能であることが明らかになった。
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