1996 Fiscal Year Annual Research Report
前立腺癌の分子生物学的手技を用いた病期判定および治療効果判定
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08771282
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小山 政史 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70276351)
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Keywords | 前立腺癌 / 病期診断 / 前立腺特異抗原(PSA) / 前立腺特異的膜抗原(PSM) |
Research Abstract |
本研究は進行性の前立腺癌患者血中に存在していると思われる前立腺癌細胞を、RT-PCR法を用いて検出し、画像上検出されない微少転移巣の存在を予測するものである。また一方画像上すでに転移の明らかな症例については、治療前の血中遊離前立腺細胞を確認し、治療後に細胞が消失しているかどうかを検討することでその症例の治療効果および予後の予測を行うものである。 前立腺癌細胞が特異的に有しているProstate Specific Membrane Antigen(PSM)のmRNAをRT-PCR法で検出するための予備実験として、女性の血中にPSMが陽性の前立腺癌細胞株LN-CaPを微量に混入した検体からRNA抽出し、lsraeliらの方法を用いてPSMの検出を行った。その結果10^6ケの白血球細胞に1ケの前立腺癌細胞が混入していれば検出可能であることが判明した。本手法を用いて各病期の前立腺癌患者血液、前立腺肥大症(BPH)患者血液、若年男性血液、女性血液中のPSMの検出を行った。進行前立腺癌患者の血液ではPSMは全て陽性で、女性では全て陰性になったが、BPH患者や若年者血液で一部false positive症例が認められた。プライマーの位置をLoricらが用いたように変更して同じ検体でPSMの検出を行ったところ、false positiveはなくなり理にかなった結果が得られ、臨床への応用が可能と思われた。 ステージBで前立腺全摘術を施行してその後臨床的にも再発を見ず、血清PSAも低値のものは全て、血中PSMは陰性であった。ステージCでホルモン療法を行い、血清PSAが低値のものはPSM陰性、上昇してきているものは陽性であった。ステージDでは治療前の症例は全てPSM陽性にでたが、ホルモン療法を行って血清PSMが低値に安定しているものは陰性に、上昇傾向にあるものは陽性にでた。ホルモン療法施行中にも血中PSMが陰性化しない症例は、一時的に血清PSA値が低下してもすぐに上昇し、biochemical relapseとなった。以上より血中PSMの存在は臨床背景をよく反映し、治療効果および予後の予測に有効と考えた。
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