1996 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠高血圧症の発症における遺伝・環境相互作用とその発症予知に関する研究
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08771298
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小橋 元 北海道大学, 医学部, 助手 (60270782)
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Keywords | 妊娠高血圧症 / アンジオテンシノーゲン遺伝子 / アンジオテンシンII受容体遺伝子 / 遺伝子タイピング / 危険要因 / 遺伝・環境相互作用 / 予防 |
Research Abstract |
妊娠高血圧症(PIH)は発症機構は不明で,効果的な発症予知法もない.本症も多くのcommon diseaseと同様に,複数の遺伝的要因と環境的要因の相互作用によって発症する多因子性疾患と考えられている.我々は今までに,アンジオテンシノーゲン(AGT)遺伝子のM235T多型のTT型の頻度およびアンジオテンシンII受容体(A II_1R)遺伝子のA1166C多型のAC+CC型の頻度が,初産または重症のPIH群において有意に高いことを示した. 今回は,PIHにおける遺伝・環境相互作用の解明を目的に,他の合併症を持たない20〜34歳の初産婦を対象として,PIH62例および正常対照者93例のAGT,A II_1Rとともに,詳細な臨床データおよびライフスタイルの,合計100項目を同時に解析した.その結果,単変量解析では遺伝要因と環境要因の合計100項目のうち14項目がPIH発症に相関(p<0.1)した.多変量解析では,それらのうち「AGT遺伝子TT型」,「A II_1R遺伝子AC+CC型」,「妊娠前の肥満(BMI≧24)」,「妊娠中の牛乳摂取不足」,「妊娠中の精神的ストレス」の5項目が独立に相関した.さらにロジスティックモデルを用いた解析では,それらが複合することにより発症危険が相乗的に高まり,5要因がすべてが複合した場合の複合オッズ比は735.1であった. また,実際に予防医学に遺伝子を用いることについての問題点を探るため,女子大生106名を対象に予備調査を行い,説明の仕方によらず遺伝子多型の検査に肯定的な回答を得た. 今後は,症例数を増やして検討を行うと同時に,遺伝環境,環境要因についてのより詳細な解析,および実際に予防医学に遺伝子を用いることの問題点についても,さらなる検討が必要と考えられる.
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[Publications] 小橋元他: "妊娠高血圧症における遺伝・環境共同作用" 日本妊娠中毒症学会雑誌. 4 (印刷中). (1996)
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[Publications] 小橋元他: "予防医学への遺伝子の応用に対する社会的受容度(その1)" 日本公衆衛生雑誌. 43・10. 338 (1996)
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[Publications] 小橋元他: "妊娠高血圧症における遺伝・環境共同作用" 日本疫学会雑誌. 7・1. 103 (1997)