1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08771407
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
遠藤 史郎 山口大学, 医学部, 助手 (20223688)
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Keywords | 頭頚部癌 / 転移 / 細胞接着因子 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
臨床的に転移が確認できない場合、転移の可能性については原発巣の占拠部位や、癌細胞の分化度、脈管侵襲の有無などの形態学的評価により推定されてきたが、転移に関連した癌細胞の生物学的特性を評価し得ないことが問題となっている。癌転移巣の形成には、血管もしくはリンパ管に進入した癌細胞が主腫瘍塊から遊離する過程が必要である。細胞間通性糖蛋白であるカドヘリン及び細胞膜裏打ち蛋白であるカテニンは、癌細胞同士の結合に必須の分子であり、カドヘリンおよびカテニンの腫瘍組織内での減少が脈管内での癌細胞遊離の過程に強く関連し、易転移性を発現するものと考え本研究を行った。 頭頚部癌患者の手術によって摘出された癌組織(23例)を直ちに凍結し、凍結切片作成後、抗カドヘリン抗体、抗カテニン抗体を一次抗体とした免疫染色を行なった。正常組織での染色性と比較することにより腫瘍組織におけるカドヘリン、カテニン染色性の低下の有無を評価した。この結果と、転移の有無、病理形態学的評価と対比させた。 カテニンにおいては正常組織においてもその染色性は一定しておらず今回評価し得る症例数を得られなかった。カドヘリン染色性については正常とほぼ同じ染色性を示すもの、染色性の低下しているもの、染色のみられないものが認められたが、同一腫瘍内においても染色性の異なる部位が混在していた。カドヘリンの染色性も必ずしも一定の染色性が得られていないが、70%以上に染色性の低下がみられ、分化度が低い例に染色性の低下が強い傾向がみられた。頭頚部腫瘍においてはその発生部位、周囲組織への進展度、大きさなどにより、臨床的な腫瘍の特性が異なる。転移の有無と染色性の低下を比較するためには、この点を考慮する必要があるが、今回症例数が少ないこともあり関連は明らかではなかった。現在染色法の条件を再検討しており、今後症例を重ね今研究を継続するつもりである。
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