1996 Fiscal Year Annual Research Report
全層角膜移植モデルによる免疫学的寛容の導入および移植角膜拒絶メカニズムの検討
Project/Area Number |
08771519
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山上 聡 自治医科大学, 医学部, 講師 (10220245)
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Keywords | 角膜移植 / 拒絶反応 / ラット / 遅延型過敏反応 / サイトカイン |
Research Abstract |
ラット全層角膜移植モデル(Fisherラット⇒Lewisラット)を用いて、T細胞の認識を直接ブロックする抗αBTCR抗体(R73)を短期間投与による拒絶反応抑制実験を行った。これまで角膜および他の臓器において、T細胞レセプターをブロックする試みはなされておらず、これまでの投与により免疫学的寛容の導入を目指した。血管の豊富な臓器(心臓など)では、手術後の投与のみ有効との報告があるため、手術前、手術後に各1mg/ラットのR73を投与したところ、角膜においては、手術前の投与は、全く無効であった。手術後の投与についても、若干生着期間が延長したに過ぎなかった。そこでR73投与は全例術後のみとし、計2.6mg/ラット投与したところ(n=15)、術後3週の時点で非投与群で全例拒絶された(n=12)のに対して、投与群では逆に全例生着し、術後3ケ月以上の長期観察を行った例(n=5)を生着することが観察され、長期生着に有効であった。ヘマトキシリン・エオジン染色で、非投与群で移植片局所に多数の細胞浸潤が認めら多のに対し、R73投与群ではその浸潤が著明に抑制されていた。術後3週の時点における遅延型過敏反応(DTH反応)をR73投与群、非投与群で比較検討したところ投与群で有意にDTHを抑制していた。しかしR73投与により透明性を維持しているラットの反対眼に対し、術後5週目に第一眼と同系ラット角膜を移植し、抗原特異的免疫学的寛容を検討したところ、第二眼は拒絶された。現在R73による長期生着例と非投与例における角膜、前房水中のサイトカインメッセージの解析を実施し、Thelper1,Thelper2バランスを含めた移植片長期生着時の免疫学的背景について検討中である。
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