1996 Fiscal Year Annual Research Report
レフチンによる腸管壁内神経叢の発生学的研究:先天性巨大結腸症の病因に関連して
Project/Area Number |
08771550
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
田中 裕之 杏林大学, 医学部, 助手 (90271270)
|
Keywords | 複合糖質 / ヒルシュスプルング病 / アウエルバッハ神経叢 / レクチン / 神経節細胞 |
Research Abstract |
ヒルシュスプルング病は、正常な腸管蠕動運動が先天的に欠如するので、腸管内容がより口側の正常腸管内に貯留停滞し、腸管閉塞症状をきたす疾患である。Neural crestより発生した腸管壁内神経節細胞は、ヒトの場合、胎生5週頃迷走神経幹より食道、胃、小腸を経て下降していき、胎生12週頃には直腸下端まで達するとされている。この経過中、何らかの原因で神経節細胞の下降に障害が生ずると、停止した部位より肛門側の腸管部で本症が発生するとされている。 一方、従来より、この腸管壁神経叢の発生や分化に、複合糖質が深く関与していると報告されている。今回我々は、壁内神経節細胞発生過程における複合糖質の変化を、特定の糖構造と特異的に結合するレクチンを用いて検討した。 方法:Wistar系ラット胎仔(胎生15日〜21日),生後3日,成体(各3個体)の骨盤部を摘出し,2.5%グルタルアルデヒド固定後、光顕観察にはパラフィン切片(4μm),電顕観察には凍結切片(40μm)を作製した。レクチン染色法として、光顕的にはABC法を用い,電顕的にはHRP標識レクチンを用いた包埋前染色法を適用した。用いたレクチンは,ConA,WGA,PNA,SBA,UEA-1,DBA,LCA,PHA-L,DSA,GS-1,VVA,MPA,BPA及びPSAの14種類である。反応特異性を、それぞれのレクチンに対する特異的阻害糖を添加することにより確認した。また,反応強度は、陰性(-)、弱陽性(【.+-。】)、陽性(+)、強陽性(++)の4段階に区分して評価した。 結果:(1)ConA、DSA、PSA、PHA-L、LCA及びWGAは、胎生期から成体に至る全期間を通じて、結腸壁アウエルバッハ神経叢に一致して反応陽性であった。なかでも、ConAは胎生17〜18日に、DSAは胎生17日以降に反応が増強する傾向を示した。(2)MPAは、胎生15日及び16日には反応陰性であったが、胎生17日以降弱陽性反応を示した。(3)UEA-1、PNA、SBA、GS-1、VVA、BPA及びDBAは、胎生期を通じて反応陰性であった。(4)電顕的には、ConA、DSA及びWGAが、神経細胞形質膜並びに神経繊維形質膜に反応陽性であり、ConAは核膜にも陽性反応を呈した。 考察:アウエルバッハ神経叢が明瞭に識別される胎生17日に一致して、ConA、DSAなどのレクチンが認識するN-グリコシド型糖鎖構造が、アウエルバッハ神経叢及びその周囲に増強することが確認され、その局在も明らかとなった。腸管において神経節が分化し、神経繊維のネットワークが形成される初期過程に、N-グリコシド型糖鎖を中心とした複合糖質が重要な役割を担っている可能性が指摘される。
|
Research Products
(1 results)