1996 Fiscal Year Annual Research Report
口腔顎顔面領域の組織発生における細胞増殖因子および転写因子の役割に関する研究
Project/Area Number |
08771566
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
天野 修 金沢大学, 医学部, 講師 (60193025)
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Keywords | 肝細胞増殖因子 / 分化 / 器官培養 / 下顎 / 骨形成 |
Research Abstract |
肝細胞増殖因子(HGF)は肝再生因子として働く以外に多くの組織の発生分化に関わることが知られている。発生初期の下顎においてもHGFおよびそのmRNAが存在することから、下顎の初期発生にも関わる可能性が示唆されたが、その役割については全く知られていなかった。 胎齢10日のマウス胎仔の下顎を摘出して無血清培地で10日間、Slavkinらの方法に従って器官培養を行った。培養は5%二酸化炭素供給下で行い、培地にはGibco-BRL社のBGJb培地を用い、1日おきに培地を交換した。 培養前の下顎は薄い上皮層に囲まれた粗な神経冠由来間葉組織から構成されていたが、培養後の組織をパラフィン包埋の連続切片でヘマトキシリンエオジン染色を施して観察してみると、舌、初期の歯胚、メッケル氏軟骨が認められた。HGF添加群ではエオジンに好染する骨様組織の発生を認めた。この骨様組織はメッケル氏軟骨の周囲に帯状に認められた。添加するHGFの濃度を変えてみたところ、高濃度添加群は低濃度添加群に比べてより多くの骨組織が形成されているようであった。 HGFはその標的細胞内でその細胞内伝達機構を機能させるためには特異的受容体(HGF受容体)に結合することで知られている。骨形成がHGFの効果であることを確認する目的で、HGF受容体のmRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドをHGFと同時に添加して、HGF受容体のmRNAからの翻訳を阻害してHGFの効果を減弱させる実験を試みたところ、HGF添加群に比べ骨形成が抑制された。逆転写PCR法でHGF受容体の発現を培養組織で調べたところ、HGF受容体の遺伝子発現が認められた。 以上のことから、下顎の初期発生においてHGFおよびその受容体が下顎骨の発生に関わっているとが示された。
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