Research Abstract |
我々は,ヒトの70キロダルトン(kDa)熱ショック蛋白質に相同性のある蛋白質の遺伝子をA.actinomycetecomcomitans(A.a.)の染色体より,その遺伝子を含む,2696bpのDNAフラグメントをクローニングし,その全塩基配列を決定した.これらの結果,以下のことが分かった.A.a.の70kDa蛋白質は,大腸菌の70kDa熱ショック蛋白質(DnaK)とアミノ酸で,83%の相同性があることが分かった.また,大腸菌のdna K遺伝子のプロモーター配列と相同の配列が,70kDa蛋白質遺伝子上流に存在した.クローニングしたDNAフラグメントには,70kDa熱ショック蛋白質以外に,40キロダルトン熱ショック蛋白質と相同性の高い蛋白質が,70kDa蛋白質遺伝子の下流に存在することが分かった.また,70kDaと40kDaをコードする遺伝子間に,400bp程のスペースシーケンスがあり,そこには,逆方向繰り返し配列が複数存在した.我々は,本年度70kDa蛋白質及び,40kDa蛋白質が熱ショックにより,発現が増強されることを,本年度,特異抗体を作成して確認したが,このA.a.に特異的な染色体構造が,70kDa及び40kDa蛋白質の発現調節に関与している可能性について,現在検討している.また,70kDa蛋白質の,歯周疾患との関連を検討するため,70kDa蛋白質遺伝子を,発現用プラスミッドに挿入し,大腸菌で,大量に発現させ,その産物をカラムを用いて精製した.それを用い,ELISA法にて,患者血清中に70kDaに対する,抗体が存在することを確認した.今後,歯周病の惹起及び憎悪に,ストレス蛋白質に対する宿主(ヒト)の免疫応答がどのように関与しているかを検討していきたい.
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