1996 Fiscal Year Annual Research Report
口腔軟組織再建に用いた遊離皮弁の組織内酸素分圧に関する実験的研究
Project/Area Number |
08771891
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
小沢 靖弘 東京歯科大学, 歯学部, 助手 (70246354)
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Keywords | 口腔再建 / 遊離皮弁 / 酸素分圧濃度 |
Research Abstract |
顕微鏡的手術による遊離皮弁の応用は、口腔顎顔面領域における切除と再建外科の視点と質を飛躍的に向上させた。この術式を成功させるには卓越した手技の習得と正確な遊離皮弁の予後判定が必要である。移植皮弁のモニターが適切であれば、一早い遊離皮弁への対処が可能で救済が行える。今回、遊離皮弁生着の成否を判定するのに、組織内酸素分圧測定が有効か否かを追究した。実験動物として体重約300gのSprague-Dawley系ラットを用いて、胸背動静脈を茎とした血管柄付き広背筋筋弁のモデルを作製した。広背筋筋弁を栄養血管のみの茎で挙上したあと、酸素分圧計のプローベを筋弁中央組織内へ穿刺固定した。また筋弁内の循環動態も同時に測定するためレーザー微小循環血流計による監視も行った。 実験方法は栄養血管茎の動脈のみをクリップしたI群、静脈のみをクリップしたII群、また動静脈両方をクリップしたIII群とに分けて測定を施行し、対照としては動静脈開存状態での値を用いた。正常な経過をとっている筋弁では組織内酸素分圧は平均約30mmHgで、血流計では平均約12ml/min/100gを示した。この値は剥離前の広背筋部の測定値よりも低く、筋弁挙上の操作および栄養血管のみの循環状態が筋弁の酸素分圧と血流を低下すると推察される。I群とIII群では、測定値は一変し低値を示し、平均値よりも下降し0点に近づく。II群では急激な変化はなく推移し、約3時間から少しづつ下降を始めるが、I、III群よりは遅滞する。救済処置の可能性を追究するため全群ともに閉塞後1,3,6時間でクリップを外し血流の回復状態を観察した。その結果、閉塞6時間以降では、血流の回復は得られないことが示唆された。組織内酸素分圧測定は組織に穿刺するため侵襲性のモニター法に属するが、連続性でリアルタイムに正確に判定できる利点を持っている。また動脈性または静脈性閉塞の区別もできるため適切な救済処置も可能とな。極めて有効なモニター法と考える。
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