1996 Fiscal Year Annual Research Report
歯の移動に伴う歯根膜線維の形態変化と歯槽骨改造過程の関連性
Project/Area Number |
08771996
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
岡藤 範正 松本歯科大学, 歯学部, 助手 (50194379)
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Keywords | 歯の移動 / 歯根膜線維 / 走査電顕 / 初期変化 / 圧迫側 / 牽引側 / 骨改造現象 |
Research Abstract |
本研究に先立ち,歯の移動に伴う移動後短期間の骨吸収と骨形成開始の様相を,走査電顕を用いて歯槽骨壁の広範囲を観察してきた.今回は,水酸化ナトリウムによって細胞成分を除去した非脱灰標本を用い,歯根膜線維の形状と形態を走査電顕を用いて観察し,歯の移動に伴う歯根膜線維と初期の骨改造現象との関連性について検討を行った. 方法として,実験にはWistar系雄性ラット(250g【.+-。】20g)を使用し,上顎右側第一臼歯を,coil-springで初期荷重約10gで近心方向に牽引した.移動開始後より1週間まで経時的に屠殺し,5%グルタールアルデハイドにて固定した.その後,試料は非脱灰の状態で5%水酸化ナトリウム水溶液にて細胞成分を除去し,近遠心,頬舌側方向に割断し,カーボン,金二重蒸着後,走査電子顕微鏡(日本電子JCXA-733型)で観察した. 結果として,圧迫側(近心面)では,移動数時間後より歯根膜の圧縮が歯頚側にみられ、経時的に根尖方向にもみられた.また歯根膜線維は屈曲し,歯槽骨壁付近で多数の血管腔を輪状に囲んだものや横断像等が認められた.移動24時間後には,屈曲した歯根膜線維に隣接した歯槽骨壁表面で,浅い吸収窩がみられ始め,この部位では歯根膜線維が断裂している像がみられ,吸収は経時的進行した.牽引側(遠心面)では,移動数時間後より歯槽頂線維束の歯根膜線維の伸展がみられ始め,経時的に根尖部においても伸展がみられた.移動24時間後には,吸収窩の窩底表面に石灰化構造物が次第に沈着しはじめ,これと同時に吸収窩付近の歯槽骨壁において歯根膜線維が確認され,伸展した歯根膜線維束の付近には細網線維と思われる網状構造も観察された.これらの歯根膜の伸展に伴う新しい骨の添加は経時的に増加傾向にあった.これより歯の移動に伴う骨改造は,歯槽骨表層に隣接した歯根膜線維の形態変化に密接な関係があることが示唆された.
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