1996 Fiscal Year Annual Research Report
ブレオマイシンセンサー蛋白質を用いた遺伝子治療-癌化学療法へのニューアプローチ-
Project/Area Number |
08772096
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
熊谷 孝則 広島大学, 医学部, 助手 (70274058)
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Keywords | ブレオマイシン / ブレオマイシン結合蛋白質 / 遺伝子発現 / 薬剤耐性 / 核局在 / Streptomyces verticillus |
Research Abstract |
ブレオマイシン(Bm)は、放線菌Streptomyces verticillusにより生産される抗生物質であり、扁平上皮癌などの治療に用いられている。しかしながら、長期投与により、副作用として肺線維症を起こしやすく、その投与は慎重にならざるを得ない。 私たちの研究グループは、Bm生産菌より、Bmを特異的に認識し、結合する蛋白質(BLMA)を発見し、その遺伝子(blmA)のクローニングに成功した。BLMAがBmに結合すると、BmのDNA切断作用は失われる。この機能に着目し、本遺伝子を肺組織中で発現させることができれば、Bm投与による肺線維症を防止できるものと考えた。本研究では、培養細胞におけるblmAの発現を試み、その機能を解析した。 強力なEF-1αプロモーターの下流にblmAを連結し、構築したプラスミドをリポフェクションにより、NIH3T3細胞に導入した。その結果、Bm耐性を示すクローンを得ることに成功した。本クローンは、BLMAを確かに生産しており、その生産は1か月以上継続した。本クローンの薬剤耐性を調べたところ、Bm系抗生剤にのみ耐性を示し、その特異性の高さが示された。抗BLMA抗体を用いた免疫染色により、BLMAは核に局在することが明らかになった。このことは、核において、BmからDNAを保護するのに役立っているものと考えられた。本クローンは、Bm存在下でも野性型細胞と同等の増殖度を示し、形態的にも変化が認められなかった。 以上の結果より、blmAは培養細胞において、Bm耐性因子として機能できることが明らかになった。従って、in vivoへの応用に一歩近づいたと思われる。なお、本研究で得られた成果について、現在、論文を作成中である。
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