1996 Fiscal Year Annual Research Report
ジアシルグリセロールキナーゼ活性化の解析およびその糖尿病への関与に関する研究
Project/Area Number |
08772173
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
野部 浩司 昭和大学, 薬学部, 助手 (30276612)
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Keywords | ジアシルグリセロール / プロテインキナーゼC / 糖尿病 / 細胞内情報伝達系 / 平滑筋 |
Research Abstract |
細胞内の様々な生命現象は、受容体などへの細胞外からの刺激によって誘発される。細胞外刺激を細胞内の標的器官に伝える情報伝達系は重要であり、イノシトールリン脂質代謝回転(PI-turnover)は、その代表的役割を果たしている。ジアシルグリセロール(DG)は、このPI-turnoverにおけるセカンドメッセンジャーであり、これを代謝するジアシルグリセロールキナーゼ(DG kinase)の活性変動は、PI-turnoverの回転速度の変化やそれに導かれる細胞機能発現に重要な役割を果たすことが予想される。しかし、DG kinaseについては確立した活性評価法が無いことから、細胞内での活性変動や病態時における変化は明らかとなっていない。本研究でははじめに、モルモット結腸紐を用いて受容体刺激時のDG kinase活性変動とその制御メカニズムを検討した。その結果、ムスカリン受容体刺激時にDG kinaseが活性化することが明らかとなり、この時、DG kinaseの細胞質から膜へのトランスロケーションが起こることが明らかとなった。さらに、このトランスロケーションがプロテインキナーゼCによるDG kinsaeのリン酸化とホスファターゼによる脱リン酸化により制御されていることが示唆された。このような知見を基に、病態時におけるDG kinase活性変動を、糖尿病ラットの各種組織を用いて検討した。それぞれの組織における活性測定の基礎的条件設定を行った後、静止時のDG kinase活性を正常ラットと比較した。その結果、脳、心筋、骨格筋では変化が認められなかったが、血管組織での減少と、精管、消化管での上昇が認められた。これらの変化は、これまで報告されたそれぞれの組織における機能障害と同一の方向性を示すことから、DG kinase活性変動が糖尿病性の機能障害の重要な因子の一つと考えられた。今後、受容体刺激時の応答性の違いや、制御機構の変化を明らかにすることにより糖尿病性の機能障害の解明に新たな情報をもたらすと考えられる。
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