1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08772203
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
谷口 好美 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (50280988)
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Keywords | 老人虐待 / 介護者 / 在宅ケア / 保健婦 / 看護職 / 家族 / 心理的過程 |
Research Abstract |
本研究では、地域の看護職が把握した事例をもとに、在宅で高齢者の介護を行う家族が虐待に至る心理的過程を明らかにすることを目的とした。 埼玉県の全市町村の保健婦が訪問および面接などで過去2年間に関わった事例のうち、老人虐待として把握された52事例を対象に、老人虐待の状況、介護者の意識、家族的背景について量的・質的な分析を行った。 老人虐待が起こった背景として、家族構成別でみると「老人と息子夫婦」が21例(40.4%)、「老人2人暮らし」が8例(17.3%)、「ひとり暮らし」が5例(9.6%)、「その他(老人と独身の子どもなど)」が17例(32.7%)みられた。虐待の種類は複合的であり「介護拒否・放任」が29例(55.8%)、「情緒的・心理的虐待」が25例(48.1%)、「身体的虐待」が21例(40.4%)となっていた。虐待が諸王自他要因として挙げられたことは、「老人と息子夫婦」では介護以前に長年の嫁姑や親子関係について問題があったため、介護者が高年齢を心理的に許せないことが報告された。また、「老人夫婦2人暮らし」や「ひとり暮らし」等では、介護者が高齢であったり家庭内に不在であることなどから、家庭内の介護力が低下しているために介護が不十分な状況であることが示された。これらの事例から、加害者の心理的過程として、被害老人からの「回避」「放置」「隔離」「心身への危害」があることを導き出した。これによって看護職の虐待事例に対する援助のあり方と予防の対策について考察した。
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