1996 Fiscal Year Annual Research Report
喉摘者とその家族のリハビリテーション過程に関する研究
Project/Area Number |
08772226
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
小原 泉 東京慈恵会医科大学, 医学部・看護学科, 助手 (80266642)
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Keywords | 喉摘者 / 家族 / リハビリテーション / 体験 |
Research Abstract |
喉頭癌や下咽頭癌により喉頭全摘出術を受けた患者(以下、喉摘者)とその家族が、がんと診断されて手術を受けた後のリハビリテーション過程において、どのような体験をし、どのように生活の再構築を果たしていくのか、その過程および構造を明らかにすることを目的として研究を行った。 対象は研究協力に同意が得られた4家族で、喉摘者とその配偶者に半構成的な面接を行った。喉摘者はいずれも男性で、術後経過年数は3年11ケ月(対象A、51歳)、2年(対象B、72歳)、1年9ケ月(対象C、68歳)、3ケ月(対象D、74歳)であり、家族構成はB、C、Dが夫婦2人暮らし、Aは妻と娘との3人暮らしであった。 4家族に共通して認められた体験は、術後に代用音声手段を獲得するまでの時期、患者との意思疎通がスムーズに図れないことに起因する「満たされない感覚」や「いらだち」である。これは、患者の意思伝達手段は筆談や口の動きであり筆記用具や時間を要すること、その割には情報伝達量が少なく微妙なニュアンスが伝わりにくいという体験であった。家族関係が良好ではない家族、視力低下や文章表現力の乏しさにより筆談が難しい家族、代用音声獲得までの時期が長い家族では、家族関係の悪化や家族の凝集力の低下が生じる可能性があると考える。 4家族はいずれも、交際範囲の縮小、外出回数の減少など、社会性が狭小化していた。特にC家族は、手術によって仕事を失い、生活保護を受給されたことに引け目を感じていること、血縁者がないこと、患者の意思伝達手段は筆談であることから医療者以外の人との交際を絶っていた。会話、食事、呼吸という人目に触れやすい機能に障害をもつ喉摘者が、代用音声獲得に代表される身体的リハビリテーションを行いつつ、自分に自信をもち社会性を維持・拡大していけるような心理社会的リハビリテーションを家族も含めて援助していく必要がある。
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