1996 Fiscal Year Annual Research Report
既往地震との比較を含めた兵庫県南部地震における住民の生活と住居の位置づけ
Project/Area Number |
08780022
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
伊村 則子 日本女子大学, 家政学部, 助手 (10257074)
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Keywords | 兵庫県南部地震 / 復興過程 / 住居 / 生活 / 要求性能 / 被災者 / 安全性 / 生活空間 |
Research Abstract |
1.はじめに 本研究は,安全な空間確保を担う「住居」について,非常時における人間が住居を通していかに行動し生活するのかを探るものである。本年度では兵庫県南部地震を主な研究対象とし,既往地震を参照しながら,「住居からとらえた地震被害とその影響-避難生活の際に用いた生活空間の変遷とその機能性-」「生活復興過程の解明-生活からみた住居のもつ意味・位置づけ-」について研究を遂行した。 2.結果 兵庫県南部地震後に被災地住民が用いた生活空間を整理し,彼らの空間に関するコメントから性能論を用いてその状況を明らかにし,最終的には日常時の住宅のあるべき姿を性能論からまとめた。その結果,震災後に被災地住民が用いた生活空間は17種類に分類でき,それらは居住空間として仮設性の高いものから恒久的なものまで多岐にわたった。性能面から生活空間を分析すると,生活空間の居住水準確保は難しく,「プライバシー,建築空間,建築物の保健性能」の性能について特に問題となり,日常生活が成立しなければ生活の場としての住居が成立しないことが明らかとなった。また,住居の破壊が与えた日常生活のダメ-ジは大きく,物理的なものから精神的なものまで広範囲に影響し,住居の確立が生活復興に対して極めて大きな位置づけとなることを明らかにした。さらに,本震災を通して,安全性について一般の人々に対し啓発・教育の必要があり,これによって社会的な安全性に対する認識が広まるものと考えた。 3.今後の研究課題 兵庫県南部地震をはじめ,日本はここ数年大地震が比較的頻繁に発生している。今後はさらに過去の地震との比較を行い,社会・文化を包含した上で,生活と住居に地震被害が与えた影響を考察し,今後われわれが地震災害に対して備えるべき知見を得たいと考えている。
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[Publications] 伊村則子: "兵庫県南部地震の復興過程における生活と住居の位置づけ" 日本家政学会大会研究発表要旨集. 第48回. 274- (1996)
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[Publications] 伊村則子: "兵庫県南部地震後に用いられた生活空間とその性能評価" 日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿)(構造II). 63-64 (1996)
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[Publications] 伊村則子: "阪神・淡路大震災で生活空間に求められた性能" 都市住宅学 第4回学術講演会研究発表論文・梗概集. 第15号. 207-210 (1996)
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[Publications] 伊村則子: "阪神・淡路大震災を通してみた社会における人命のとらえ方" 日本建築学会関東支部研究報告集(構造). 21-24 (1997)
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[Publications] 伊村則子: "阪神・淡路大震災を通してみた社会における人命のとらえ方" 日本女子大学紀要 家政学部. 第44号. (1997)
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[Publications] 伊村則子: "阪神・淡路大震災における生活空間の現状と要求性能" 日本女子大学大学院紀要 家政学研究科・人間生活学研究科. 第3号. (1997)