1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08780087
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田中 雅人 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (70207140)
|
Keywords | 運動イメージ / 言語的コード / ことば |
Research Abstract |
情報の伝達者である指導者が,情報の受容者である学習者に運動を示す場合、運動イメージを言語的コードに変換したことばで学習者に伝えている.一方,学習者は,伝達されたことばを運動イメージに再構成し,さらに運動へと変換している.そこで,本研究では,指導者が運動イメージを伝達するための言語的コード化,および学習者の言語的コード化された情報からの運動イメージの再構成について検討した. スキー指導員を対象に,技術レベルの異なる学習者に対する運動課題を呈示し,示範とともに補助的に用いる言語的情報について調査した.また,大学生を対象とし,運動イメージの形成における言語的情報の有効性に関する質問紙を実施した.さらに,実際にスキー運動を行ない,言語的情報のパフォーマンスへの影響を調査した. その結果,指導者は,情報を伝達するために,動きの力学的・解剖学的な説明を行うためのことばを多く使用していたが,動きを導く学習者の内的なイメージに働きかける情報は十分ではなかった.運動の欠点は,示範やビデオなどの視覚的情報によっても示すことができるが,運動の修正は,言語的情報に頼る部分が大きい.さらに,運動の流れやリズムなどの時間的・力動的イメージは,視覚的情報のみから得ることは困難であり,言語的コードに置き換えることにより可能になると考えられる.一方,学習者は,身体部位の運動の大きさのような空間的イメージを形成するための言語的情報からのイメージの構成よりも,力の強弱や運動のリズムに関わる力動的表象を形成するための情報からのイメージの構成が困難であった.したがって,視覚的情報では伝達が困難な時間的・力動的イメージを言語的コード化するための方略を検討することが必要である.また,運動イメージを形成する能力には,個人差が存在するため,学習者の認知的なレディネスを考慮した指導が望まれる.
|