1996 Fiscal Year Annual Research Report
プロトコル分析による描画表現意欲の低下児童に関する基礎的研究
Project/Area Number |
08780188
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
栗田 真司 山梨大学, 教育学部, 助教授 (00195554)
|
Keywords | プロトコル分析 / 描画ストラテジー / 人物画 / 制作過程 |
Research Abstract |
本研究は,“10歳前後に発現する描画表現に対する意欲の低下傾向"いわゆる「10歳レベルの節」に着目し,プロトコル分析という認知科学的手法によって,その内的過程の分析を行うことを目的とした。これによって、指導方法や学習材の適正化による対応策を見いだそうとするものである。具体的には,描画表現意欲低下の対象は,視覚的写実成果を課題とする描画表現に対するものではないかと考え、その検討方法として、内的制作過程に着目し,そこで用いられる各自の制作方略strategyや対象の認知過程を外在化する方法を考案した。 まず描画表現意欲に関する質問紙調査・面接調査を実施し、次に被験者に対し,描画課題の解決事態中に考えていること一切を声に出す思考口述thinking aloudの同時報告法を用いた個別描画実験を実施し,プロトコル・データを収集した。課題は、想像画自画像、観察画自画像、想像画チョキ手、観察画チョキ手の四種類である。この口述データとともにビデオに記録された画像データによって表現過程をモデル化した。 その結果次の点が明らかとなった。(1)意欲度の低い被験者は、自分の描画に対して教師や友人や親が発した感想や評価の言葉を具体的に記憶している。(2)プロトコル・データ中の指示語と目、鼻等の部位の名詞の頻度を比較した結果、意欲度の高い被験者の場合、想像画は名詞が優位、観察画は指示語が優位であったが、意欲度の低い被験者は、想像画も観察画も名詞が優位であった。(3)人物画の描画ストラテジーに関して、意欲度の低い被験者には、顔の内部を後回しにするという傾向がみられた。
|