1996 Fiscal Year Annual Research Report
日本語の文章理解におけるキーワードによる内容予測の効果に関する研究
Project/Area Number |
08780215
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
金城 尚美 琉球大学, 教養部, 助教授 (60253928)
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Keywords | 日本語教育 / 読解 / スキーマの活性化 / キーワード / 内容予測 |
Research Abstract |
本研究は、日本語学習者の文章理解を促進し効率的な読解活動が行えるようにするための指導法を見い出すことを目的として行った。近年、認知心理学の研究から読解の過程が明らかにされ、文章を理解するにはトップ・ダウン処理とボトム・アップ処理の両方の処理がうまく促進されなければならないことがわかってきた。外国語学習においてもそのような読みのプロセスに沿った読解指導が必要であると言われており、さまざまな試みがなされている。その一つのアプローチとして、読みに入る前の活動として様々な先行オ-ガナイザーを学習者に提示することによりスキーマを活性化する指導法が有効であると言われている。そこで本研究ではスキーマを活性化させる方法として、文章中のキーワードから文章内容を予測させ、キ-コンセプトに結び付ける語彙ネットワーク形成活動を取り上げ、文章理解の実験を実施した。 実験は、中級前期の学習者を(1)文章を自分で読んで問題を解く群、(2)読解前活動として文章中の6つのキーワードを順次提示し文章内容を予測してから読み、問題を解く群、の統制群と実験群の二つに分けて行った。各グループの学習者には、読解力を調べるための読解問題をやってもらい、グループ間の等質性を調べた。また文章読解後、文章理解問題を実施し、処遇の効果を調べた。 今回の実験では実験群の事後テストの平均点が統制群より高いという結果は得られたが、統計的な有意差は認められなかった。しかし、文章を読む前にキーワードにより内容を予測していくという活動は、学習者には面白かったと好意的に受け止められた。 本実験において有意な差が認められなかった要因として、被験者の出身地域に偏りが見られたこと、読解材料が被験者のレベルに適していなかった可能性があること、キーワードの提示の方法などが考えられる。今後その点を考慮しさらに研究を続けていくことが課題である。また語彙ネットワーク形成活動は、事後直後の結果だけではなく、何日か後の記憶に影響を与える可能性も高いため、リコールテストを加えた効果を測ってみる必要があると考えている。
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