1996 Fiscal Year Annual Research Report
イオン照射したバナジウム合金中の温度変動環境下における損傷過程に関する研究
Project/Area Number |
08780479
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福元 謙一 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (30261506)
|
Keywords | バナジウム合金 / 核融合炉材料 / 温度変動照射 / 核形成および成長過程 / イオン照射 |
Research Abstract |
バナジウム合金は低誘導放射能、高温強度そして耐照射損傷性の点から核融合炉構造材料として注目されている。現在までの照射損傷研究で照射温度一定下での点欠陥及び欠陥集合体の形成過程が、バナジウム合金をはじめとした各種金属・合金で明らかにされてきた。このため各材料の照射下での寿命や健全性の予測をある程度まで模擬することが可能になってきた。しかしながら各融合炉実機での照射環境は各種照射条件が非定常的であり、特に温度変動下であることから欠陥の形成過程の予測が大きく難しくなってくる。温度変動に伴う欠陥形成過程は各種反応の速度の変化に伴う形成速度の変化のみならず、欠陥自体の熱的安定性にも変化を与え、損傷過程を複雑にする。本研究ではバナジウム合金において照射温度を照射中に変化させた温度変動照射をイオン、中性子を用いて行い、微細組織および強度変化から温度変動の損傷過程への影響について明らかにするものである。イオン照射は東北大金属材料研究所のタンデム加速器で、正確に表面温度を測定し且つ温度変動を行える試料ホルダーを開発して照射実験を行っている。中性子照射はJMTR原子炉で温度変動制御した中性子照射した試料の電顕観察、ビッカーズ硬さ試験および陽電子寿命測定を行った。中性子照射からは興味深いデータが得られた。キャビティーおよび転移ループの核形成および成長の頻度が高い温度領域は異なっており、核形成速度および成長速度の高い領域で温度変動が極僅かでも生じる場合、温度一定照射下の組織と比較して定性的にも大きな相違が見られた。またある温度以上で形成される析出物に関しては温度変動効果はあまり見られず、定量的にも大きな相違は見られない。これは欠陥自体の熱的安定性や点欠陥に対するシンク強度の相違によるものと考えられ、今後さらに多くのパラメータをイオン照射で変えることにより包括的な知識を蓄積する必要がある。
|