1996 Fiscal Year Annual Research Report
ファラオニスフォボロドプシン光サイクルの分子機構の解明:大量発現系の確立を通して
Project/Area Number |
08780609
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
奈良 敏文 北海道大学, 薬学部, 助手 (30241350)
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Keywords | 古細菌 / 高度好塩菌 / レチナ-ルタンパク質 / 分裂酵母 / 大量発現 |
Research Abstract |
本研究を開始する時点で、ファラオニスフォボロドプシン遺伝子(ppR)を高度好塩菌中で発現することが困難であることが、申請者のこれまでの研究結果から予想された。そこで、高度好塩菌に生化学的性質が近く、また遺伝子工学的手法がより容易な分裂酵母中でその発現系の構築を試みた。 まず、安定な大量発現が見込めたその類似タンパク質、バクテリオロドプシン(bR,bop遺伝子産物)の発現系の構築を目指した。酵母の発現ベクターpREP1のnmtl promoterの下流にbop promoterを含む1.6kbpのbop断片をつなぎ、分裂酵母Schzosaccharomyces pombe中に導入した。チアミン非存在下でnmtl promoterを誘導し、更に10μMのレチナ-ル存在下で一晩培養しレチナ-ルを再構成してもbRの発現を示す紫色は呈さず、この方法ではbRの発現が困難であると判断できた。そこで、Nde I siteを利用してnmtl promoterにbopを直結する発現plasmidを作成し、分裂酵母を形質転換した。同様の方法でnmtl promoterを誘導しレチナ-ルを再構成すると、bRの発現を示す紫色を呈する細胞が得られた。この菌体にフラッシュを照射し580nmの吸収を経時的に測定すると、フラッシュ照射後その吸収は大きく減少し、更に10ms程度で元に戻る結果が得られたため、分裂酵母中で発現するbRが高度好塩菌中で発現するものと同様のphotocycleを持つ状態で発現すると考えられる。また、生菌でphotocycleが観察できたことから、高度好塩菌中と同様に大量発現すると考えられた。 そこで次に、この発現系を利用しppRの発現を試みた。これまでの結果、レチナ-ルの再構成により紫色を呈するほどの発現は見られていない。現在、免疫学的方法によりその発現の有無を確認している。 この間、高度好塩菌から得られたppRをリポソームに再構成し、それが光照射により膜電位を形成し、またこれが弱酸の存在に依存することを明らかにした。今後、ppRの発現系の確立を通し、この分子機構の解明を引き続き行いたい。
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