1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08780625
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田村 厚夫 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 講師 (90273797)
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Keywords | タンパク質 / 低温変性 / 安定性 / 折りたたみ / 円二色性 / 核磁気共鳴 / 構造生物学 / 生物物理学 |
Research Abstract |
Streoptomyces subtilisin inhibitor(SSI)というタンパク質の存在状態が、温度、pHによってどう変わるかを示す相図を作成した。これは、円二色性(CD)装置を用い、タンパク質の二次構造を反映する遠紫外領域、および三次構造を反映する近紫外領域の測定を、温度、pHを変化させて行うことで得たものである。この結果、SSIの構造転移について以下のことが明らかになった。 1,native構造は、室温から温度を上げた場合だけでなく、下げた場合にも壊れる。後者即ち低温変性は、以前報告されたような特殊なものではなく、タンパク質に一般的なメカニズムおよび熱力学的量を示した。 2,ところが、1で述べた一般的な低温変性が起こった後に、native構造とは全く異なった三次構造および熱力学量をもった状態(D′)を新たに形成する。 3,pH2.4以下では、D′状態から温度を上げると、三次構造はほとんど高温変性構造と同等に壊れているが、二次構造は半分程度しか壊れていない中間状態となる1段目の転移と、引き続き高度に変性する2段目の転移が起こる。熱力学量を得るプログラムでの解析と併せて、この2段目の転移は1次の相転移ではないと考えられた。 さらに詳細な情報を得るため、SSI中の窒素を15Nで標識し、窒素と水素の2次元相関核磁気共鳴(NMR)測定をpH1.5で温度を変えて行った。この結果、D′状態では相当量の明確な3次構造が存在すること、この構造が20℃以上ではほぼ消滅することなどがわかり、CDの結果をさらに高い空間分解能で支持することができた。
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