1996 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト中枢神経系の発生および形成障害におけるアポトーシス発現に関する遺伝子学的研究
Project/Area Number |
08780729
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊藤 雅之 鳥取大学, 医学部, 助手 (50243407)
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Keywords | 発生 / 神経細胞死 / アポトーシス / TUNEL法 |
Research Abstract |
発生過程において神経細胞の数は過剰に産生され、シナプス結合が完成されたのち減少することが知られている。一方、中枢神経系にも生理的に起る細胞死あるいはアポトーシスが報告されている。神経細胞分裂期以降で、このアポトーシス発現の正常発達脳との違いが形成異常脳をもたらす大きな要因の一つであると推察される。そこで、神経細胞の発生各時期でアポトーシスによって生じるDNA fragmentを組織形態学的、遺伝子学的に調べた。 対象は、胎生6週から38週の神経病理学的に異常のない24例で、ホルマリン固定パラフィン包理および凍結ヒト胎児脳を用いた。これら各週数について1ないし5例の前頭葉の皮質および側脳室周囲を調べた。 アポトーシスの形態学的評価のため、in situ labeling法(TUNEL法)を行い、アポトーシス発現の分布を発達的に検討した。また、対象の胎生20週および36週の凍結脳からDNAを抽出し、Y.Gavrieliらの方法に準じDNA電気泳動をした。 その結果、TUNEL陽性細胞は皮質では各週齡で2-3%の細胞にみられた。胎生22から24週で比較的多く、8%の細胞にみられた。また側脳室周囲では、胎生28週以降多くみられた。DNA電気泳動によるladder patternが得られ、TUNEL陽性細胞はアポトーシスと考えられた。 胎生22週以降の神経細胞は組織化される時期で、この頃に最も多くのTUNEL陽性細胞が観察された。これは、生理的に神経細胞数が減少しているものと考えられる。すなわち、発生過程における神経細胞数の減少は、その大部分がアポトーシスによるものと推察される。ヒト正常発達脳での生理的神経細胞死の観察は今までの報告になく、新たな知見である。 これらの研究成果は、論文投稿準備中である。また現在、形成異常脳でのアポトーシス発現を調べ、その病態解明へと展開している。
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