1996 Fiscal Year Annual Research Report
味覚嫌悪学習の脳内神経機構の電気生理学的・行動薬理学的研究
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08780767
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八十島 安伸 大阪大学, 人間科学部, 助手 (00273566)
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Keywords | 味覚嫌悪学習 / 扁桃体 / 大脳皮質味覚野 / ユニット活動 / 蛋白リン酸化酵素C / 可塑性 / 記憶 |
Research Abstract |
味覚嫌悪学習の脳内神経機構について、ラットを用いて電気生理学的・行動薬理学的研究を行った。 ラット大脳皮質味覚野ニューロンの条件味刺激に対する味応答性を経時的に記録・比較したところ、条件づけ操作前後によって、応答に増強性変化を示すニューロンを認めた。応答性の経時的変化パターンには、条件づけ操作30分後から獲得されていた増強性応答が条件づけ操作の6時間後まで維持されていた群と、30分後前後に獲得されていた増強性応答が60分後には減弱し、90分後以降認められなくなった群であった。前者を長期的増強型ニューロン(6/122)と、後者を短期的増強型ニューロン(8/122)と、各々呼ぶこととする。すべての長期的増強型ニューロン(6/6)は、キニ-ネに最大の味応答を示す(キニ-ネベスト)ニューロンであった。短期的増強型ニューロンには、塩ベスト(3/8)、塩酸ベスト(4/8)、キニ-ネベスト(1/8)があった。 味覚嫌悪学習に関わる脳部位の中で、扁桃体・大脳皮質味覚野における細胞内情報伝達系を調べるため、条件づけ操作の中のさまざまな時期に蛋白リン酸化酵素C(PKC)の活性阻害剤をそれらの脳部位に微量注入した。条件味刺激であるサッカリンをラットに摂取させた後、PKC阻害剤を扁桃体や大脳皮質味覚野に注入し、30分後に無条件刺激として塩化リチウムを腹腔内投与した。翌日、サッカリンを再呈示すると、阻害剤注入群のラットは、溶媒注入群のラットに比べて有意に多くのサッカリンを摂取した。PKC阻害剤を条件づけ操作の4時間後、もしくは、サッカリン再呈示の30分前にそれぞれの部位に注入した群におけるテスト時のサッカリンの摂取量と、溶媒注入群のサッカリン摂取量と間には有意差を認めなかった。つまり、条件づけ操作時にのみ扁桃体や大脳皮質味覚野におけるPKCを不活性化すると、味覚嫌悪学習の獲得が障害されることがわかった。 味覚嫌悪学習獲得時には、扁桃体や大脳皮質味覚野での条件味刺激に対する応答性が変化するが、この変化は両部位におけるPKC活性化に依存したシナプス可塑性に起因し、その変化は味覚嫌悪学習獲得に必要である可能性がある。
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Research Products
(1 results)