1996 Fiscal Year Annual Research Report
前脳血流慢性低灌流負荷による学習記憶障害に及ぼす心理的要因と脳内神経伝達機構
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08780770
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
田中 健一 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (20281313)
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Keywords | モノアミン / ドーパミン / セロトニン / 線条体 / オペラント型弁別学習 / 学習障害 / 意欲 / GFAP陽性細胞 |
Research Abstract |
1.脳内モノアミン神経系の変化:前脳血流慢性低灌流負荷3・6・12週後の脳内各部位における,モノアミン及びその主要代謝産物7種の組織内含量をHPLC-ECDシステムを用いて測定した.その結果,低灌流負荷3週後の線条体において、dopamine含量が偽手術群に比べて有意に上昇し,線条体dopamine系代謝回転と前頭皮質serotonin系代謝回転が各々有意に低下した.いずれの変化も6週以降では有意な差は認められなかった. 2.知的機能に対する影響:ライトのon/offを手がかり刺激とするオペラント型弁別学習課題(mult VI EXTスケジュール)を用いて,負荷3週後の時点から本訓練を開始し,30日間継続した.正反応数/総反応数(弁別率)は,偽手術群が80.2(]ST.+-。[)2.8%に達したのに対し,低灌流群では68.0(]ST.+-。[)3.2%に止まった.一方,反応率(単位時間当りの総反応数)では有意差が認められず,弁別率の差は学習機能に主に依存していることが示唆された. 3.心理的要因の行動科学:痴呆に及ぼす心理的要因のうち,意欲に着目し,報酬刺激の強化値を測定する行動系として標準的に使用されるPR強化スケジュールをベースとした評価系の確立を目指した.報酬による行動の強化に重要とされる側坐核を6-OHDAにより両側性に破壊することで,評価系の有用性を確認した.その結果,実験期間中の体重制限を自由摂取時の95%にすると,対象であるsaline注入ラットとの間で有意な差が認められた.したがって,本研究で確立した評価系は意欲を検討し得ることが示された. 4.進行性神経細胞死の確認:抗GFAP抗体による免疫組織化学を行なったところ,低灌流負荷3週後の時点で偽手術群に比べ、低灌流群では線条体外側部を中心にGFAP陽性細胞が多く認められ,細胞傷害が示唆された.6・12週後ともに同様な所見が得られたが,進行性かどうかについては確認できなかった.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tanaka,K.: "Relationship between cholinergic dysfunction and discrimination learning disabilities in Wistar rats following chronic cerebral hypoperfusion" Brain Research. 729. 55-65 (1996)
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[Publications] Tanaka,K.: "Chronic cerebral hypoperfusion induces discrimination learning disabilities in learning-acquired rats" Neurobiology of Aging. 17(S4). S142- (1996)
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[Publications] Wada,N.: "Effects of chronic hypoperfusion of the rat forebrain on monoamines and their metabolites" Japan Journal of Physiology. 46(S). S225- (1996)
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[Publications] 田中健一: "前脳血流慢性低灌流負荷のラット脳内神経系に及ぼす影響" 神経化学. 35(3). 316-317 (1996)
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[Publications] 堀耕治: "側坐核ドーパミンニューロン破壊はモティベーションを低下させるか? 1.累積比率強化スケジュールによる検討" 神経化学. 35(3). 236-237 (1996)
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[Publications] 田中健一: "ラット脳血流慢性低灌流状態下における情報伝達機能障害の脳内部位特異性について" 日本病態生理学会雑誌. 5(2). 53- (1996)