1996 Fiscal Year Annual Research Report
歯科矯正時の歯槽骨リモデリングに関する生体力学的研究
Project/Area Number |
08780841
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Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
森川 一 旭川工業高等専門学校, 制御情報工学科, 助手 (20239635)
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Keywords | 生体力学 / 歯科矯正学 / リモデリング / 有限要素法 / 臨床計測 / 歯槽骨吸収速度 |
Research Abstract |
本研究は,力学条件が明確に設定できる歯科矯正治療に着目し,歯槽骨リモデリング機構を理解するための基本量の一つである歯槽骨吸収速度が,歯の種類によらず一定であるという申請者らの仮説を生体力学的手法を用いて検証することを目的とした.解析対象とする歯をこれまでの犬歯のみから犬歯と臼歯を含めた歯列に拡げ,新たな有限要素モデルを構築し,既に開発した解析方法を適用した.歯の移動速度は,矯正力の大きさと比例関係にあるとの仮定の下に,様々な矯正力や矯正装置などの力学条件下での有限要素解析により得られた応力値と臨床床計測により得られた歯の移動速度の関係を対応付けて歯槽骨吸収速度を推定した.その結果.これまでの解析範囲内では,矯正装置や対象とする歯の種類によらず,歯槽骨吸収速度は0.5μm/(kPa・day)の一定値であることを確認した.これにより,従来の歯冠部での矯正力と移動量の関係で議論した研究や歯根部の応力が一様に分布していると仮定して歯冠部での矯正力を歯根部の投影面積で除した応力値と歯冠部移動量とを関連付けて議論している研究に比べ,より精確にその値を明らかにできた.これより,歯の移動原理のより本質的で,定量的な議論が可能になったといえる.しかし,歯の移動を引き起こす骨吸収の担い手である破骨細胞にとって最適な歯根部応力が存在するという考えもある.そのため,細胞レベルでのミクロな解析も行い.歯の移動の原因である破骨細胞の応力依存性を検討した.その結果,圧迫側歯根膜外周部における最小主応力が-40kPa程度の部位に破骨細胞が特異的に存在し,この付近が破骨細胞存在の最適応力であることが示唆された.今後は,以上のマクロ的な解析結果とミクロ的な解析結果を対応づけ,より詳細に歯槽骨吸収速度について検討する必要がある.
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[Publications] 西平 守正: "実験的歯科矯正における破骨細胞出現部位の応力解析" 顎顔面バイオメカニクス学会誌. 2(印刷中). (1997)
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[Publications] 藤村 裕介: "歯科矯正用CAD/CAMシステムの開発" 日本機械学会北海道学生会卒業研究発表講演会講演前刷集. 23-24 (1997)
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[Publications] 西平 守正: "歯根膜の弾性特性の測定" 電子情報通信学会 技術研究報告. MBE96-41. 45-50 (1996)
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[Publications] 森川 一: "歯科矯正時の移動歯と固定歯派の歯槽骨吸収速度の解析" 医用電子と生体工学. 34特別号. 475- (1996)