1996 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性好冷細菌のNa^+輸送性ATP合成酵素遺伝子の解析
Project/Area Number |
08833001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高田 泰弘 北海道大学, 大学院・理学研究科, 講師 (10163213)
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Keywords | 海洋細菌 / 好冷細菌 / エネルギー代謝 / ATP合成酵素 / ナトリウムイオン / 遺伝子解析 |
Research Abstract |
H^+輸送性F_0F_1-ATPaseに類似してNa^+駆動力でATPを合成する非常にユニークな海洋性好冷細胞Vibriosp. ABE-1株のNa^+輸送性ATP合成酵素の特徴を遺伝子レベルで明らかにするため、本酵素サブユニット遺伝子のクローニングとその塩基配列決定を試みた。 多様な生物のH^+輸送性F_0F_1-ATPaseの間や嫌気性菌のNa^+輸送性ATP合成酵素との間で高い相同性を示すことが知られているこれらの酵素の可溶性F_1部分のβサブユニットの遺伝子を塩基配列のデータベースで検索し、特に相同性が高い領域の配列を持つ二種のオリゴヌクレオチドを合成した。そして、これらをプライマーとしてPCRを行ったところ、この部分を含むVibrio ABE-1株の染色体DNA断片(255bp)を増幅することができた。このDNA断片をプローブとしたλEMBL3を用いて作成したVibrio ABE-1株の染色体DNAライブラリーのプラークハイブリダイゼーションの結果、ポジティブな5つのクローンを得た。これらのクローンは12〜16kbpのDNAインサートを含み、その制限酵素地図から、これらのインサートはVibrio ABE-1株染色体DNA内の共通した一つの領域をコードしているらしいことが示唆された。これらのなかの一つのインサートDNAの塩基配列を決定したところ、このインサートは大腸菌のH^+輸送性F_0F_1-ATPaseのα、β、γとεサブユニット遺伝子の塩基配列とヌクレオチドレベルでそれぞれ70、69、64と58%の相同性を示すORFを持つことが明らかとなった。さらに、H^+輸送性F_0F_1-ATPaseのすべてのサブユニット遺伝子はまとまって存在して一つのオペロンを形成していることが知られているが、これらのORFも大腸菌のサブユニット遺伝子と同じ順序で並んで存在することがわかった。これらの結果は本菌のATP合成酵素が嫌気性菌のNa^+輸送性ATP合成酵素と同様に、多くの生物に普遍的に存在するH^+輸送性F_0F_1-ATPaseと遺伝子レベルで類似していることを示唆している。
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