1997 Fiscal Year Annual Research Report
緑色光合成細菌クロロゾームの超分子構築-バクテリオクロロフィルc同族体の意義-
Project/Area Number |
08836011
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
上原 赫 大阪府立大学, 先端科学研究所, 教授 (60081329)
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Keywords | 緑色光合成細菌 / Chlorobium limilola / カリウムイオン制限培地 / クロロゾーム / バクテリオクロロフィルc同族体 / 生合成 / バクテリオクロロフィルd同族体 / ^1H-NMRスペクトル |
Research Abstract |
緑色光合成細菌C.limicolaの集光器官クロロゾーム中に多量に含まれるバクテリオクロロフィル(BChl)c同族体の意義を明らかにするため、C.limicolaを培地成分の異なる培地中で培養し、BChl c同族体[E,M]BChl c_F,[E,E]Bchl c_F,[P,E]BChl c_Fおよび[I,E]BChl c_Fの組成比を比較した。培地成分組成を変えてもBChl c同族体の組成比に変化は見られなかった。しかしながら培地中のカリウムイオン(K^+)源をKHCO_3のみに制限し、その濃度を変化させたところ、K^+源の濃度が0.2mM以下の培地で増殖した菌体のクロロゾーム中に、BChl c同族体と異なるBChl類が生成し、その同族体組成比がBChl cと同じであることを見出した。そのうちの2つの主要成分をHPLCで単離したところ、いずれもQyバンドの吸収極大波長(ジエチルエーテル中)が650nmであり、BChl dの同族体であることが示唆された。^1H-NMRスペクトルからそれぞれ、[E,E]BChl d_F,および[P,E]BChl d_Fと同定された。次に、培地中のナトリウム塩およびカリウム塩をいずれか一方に統一した培地をそれぞれ調製してその混合比率を変化させて培養を行った結果、Na^+:K^+が98:2のとき、BChl cの生合成が阻害されBChl dが生成することを初めて認めた。BChl dの各同族体の組成比は対応するBChl cのそれに全く同じであり、緑色光合成細菌においては、BChl cの前駆物質がBChl dであり、BChl dからBChl cへの変換にK^+が関与することが明らかになった。又、水-ジメチルスルホキシド混合溶液中でBChl cとBChl dの同族体の会合挙動を比較した結果、両者は全く異なることがわかった。これらの結果はBChl c_F同族体の生物学的意義の考察に示唆を与えるものである。
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