1996 Fiscal Year Annual Research Report
老化心筋におけるエンドセリン受容体のアップレギュレーションとその病態生理学的意義
Project/Area Number |
08838001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Section | 時限 |
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
片野 由美 山形大学, 医学部, 教授 (70018696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石幡 明 山形大学, 医学部, 助手 (40232326)
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Keywords | エンドセリン受容体 / ラット / 老化心筋細胞 / 老化平滑筋細胞 / 陽性変力作用 / 血管平滑筋収縮作用 / 遺伝子発現 / 加齢変化 |
Research Abstract |
エンドセリン(ET)は,持続的かつ強力な血管収縮作用を惹起すること,心筋細胞肥大促進作用を持つことから,心筋梗塞や心不全など循環器疾患の発症に密接にかかわっている内因性因子として注目されている.申請者らは,心血管系のET-1反応性が加齢によって著明に変化することに着目し研究に着手した.その結果,ET-1によって惹起される冠血管収縮作用は老化にり著明に増強されること,内皮由来の血管弛緩因子のうち,ET-1によるプロスタサイクリン産生は不変だが,NO様物質の産生・遊離機能が老化によって著明に低下すること,この低下が老化によるET-1の作用増強に寄与しており,血管内皮細胞機能の加齢変化が,加齢に伴う循環器疾患増加の一因であることを見いだし報告した. 本研究課題では,心筋細胞におけるET-1受容体の加齢変化およびその病態生理学的役割を明らかにする目的で実験に着手した.その結果,1)ET-1受容体は,若齢ないし成熟ラット心筋組織に比し,老化心筋において著明に増加していること.2)ET-1は,ラット心筋に対し腸性変力作用を惹起すること,しかし老化心筋のET-1受容体が著明に増加しているにもかかわらず陽性変力作用は著明に低下すること.3)ET-1によって惹起される陽性変力作用はET_A受容体の選択的拮抗薬によりほぼ完全に遮断され,ET_B受容体の選択的拮抗薬ではほとんど影響を受けないことから,ET-1による陽性変力作用は主としてET_Aを介すること.4)受容体結合実験の結果から,心筋のET-1受容体は殆どがET_Aであること.以上が明らかになった. 現在若齢ラットと老化ラットの心筋細胞のETの遺伝子発現の相違を調べ,著明に減少ないし増加する遺伝子が何であるかをスクリーニングし解析中である.また血管平滑筋におけるET-1の老化および病態生理学的役割を明らかにする研究を追加し,現在平滑筋収縮機能実験をほぼ終え,血管平滑筋細胞を培養し,若齢ないし成熟ラットと老化ラット平滑筋細胞のETの遺伝子発現の相違についても検討中であり,間もなく結果が得られる予定である.
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