1996 Fiscal Year Annual Research Report
老化によるシグナル伝達の破綻とその制御に関する分子薬理学的研究
Project/Area Number |
08838021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Section | 時限 |
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
宮本 篤 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (50166196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大鹿 英世 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50045358)
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Keywords | 老化 / 情報伝達 / 学習・記憶障害 / ニューロステロイド / デハイドロエピアンドロステロン / プレグネノロン / コレステロール / C57BL / 6Jマウス |
Research Abstract |
近年、神経系に直接作用するステロイドをニューロステロイド(ニューロアクティブステロイド)と呼び、従来のステロイドホルモンと別のカテゴリーとして取り扱われる様になってきた。ニューロステロイドをコレステロールから合成する酵素の存在が脳内グリア細胞に、また末梢からプロゲステロンを代謝する酵素がグリア細胞と一部の神経細胞に存在する事が報告されており、中枢の神経系活動調節におけるニューロステロイドの役割が注目されている。一方、学習・記憶障害モデルは、抗痴呆薬を開発・研究するために最も重要なウエイトを占める。これまで若齢あるいは成熟動物を用いた種々の学習・記憶障害動物が作成され抗痴呆薬の開発・研究に応用されているが、より臨床像に近いモデルとしての老齢動物を用いた評価が要求されている。これらの現状を踏まえ、比較的長命な生理的老化マウス(C57BL/6J)の学習・記憶障害の程度と生体膜老化に伴う情報伝達機構破綻との関連に焦点をあて、ニューロステロイドの効果を検討した。受動的回避試験により、比較的長命な生理的老化C57BL/6Jマウスでの被ショック体験は、1)成熟マウスで高く保存されていること、2)記憶保持率は加齢と共に低下する事、3)老齢マウスにおける記憶保持:記憶消失の割合はほぼ5:5である事から、これらC57BL/6Jマウスが老年期痴呆解明のモデルとしてばかりでなく痴呆関連治療薬の研究・開発に有用である可能性が示唆された。ニューロステロイドとしてのデハイドロエピアンドロステロン(DHEAS)あるいはプレグネノロン(PS)は、受動的回避試験において老化に伴う記憶障害を共に改善したが、PS投与群での改善作用の方が顕著であった。これまでニューロステロイドは、GABA_A受容体・Clチャネルの開口頻度の増加と開口時間の延長を引き起こすばかりでなく、NMDA受容体・Ca^<2+>チャネル電流をμM濃度で抑制すること、nM濃度で百日咳毒素感受性G蛋白質連関機構を介して電位依存性Ca^<2+>チャネルを抑制することなどが報告されている。またニューロステロイドの行動に対する効果としては、催眠・麻酔作用、抗痙攣作用ならびに記憶保持作用などが知られている。ヒト・サル・マウス血漿DHEASレベルは加齢とともに著しく減少することは周知の事実であるが、このメカニズムはよくわかっていない。これらの事実からニューロステロイドは中枢神経系において種々の神経情報伝達を調節している可能性があり、老化に伴う情報伝達機構破綻との関連について今後検討すべき課題であると思われる。
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[Publications] 宮本 篤: "C57BL/6J老化モデルマウスの学習・記憶障害に対するニューロステロイドの作用" 日本薬理学雑誌. 108. 139P-142P (1996)
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[Publications] 宮本 篤: "ラット大脳皮質におけるホスホリパーゼCの多様性と調節機構" 神経化学. 35・3. 630-631 (1996)
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[Publications] Kanaya,Noriaki: "Role of L-type calcium channels on helothane-induced myocardial depression in cultured rat ventricular myocytes." Res.Commun.Mol.Pathol.Pharmacol.91. 85-96 (1996)
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[Publications] Ma,Zenghua: "Role of altered beta-adrenoceptor signal transduction in the pathogenesis of cirrhotic cardiomyopathy in rats." Gastroenterology. 110. 1191-1198 (1996)
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[Publications] Miyamoto,Atsushi: "Dual regulation of phospholipase C activity by G proteins in rat cerebral cortex." Acta Histochemica et Cytochemica. 29. 894-895 (1996)
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[Publications] Miyamoto,Atsushi: "Pharmacological Intervention in Aging and Age-Associated" Annals of the New York Academy of Sciences, 11 (1996)
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[Publications] 宮本 篤: "抗痴呆薬研究の最前線-遺伝子レベルから丸ごと動物まで-" J.R.Prous, 4 (1997)
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[Publications] 宮本 篤: "長寿科学エンサイクロペディア(百科事典)" (財)長寿科学振興財団, 4 (1997)