1996 Fiscal Year Annual Research Report
目撃者の記憶変容:偏光フィルタによる実験的「見まちがい」研究
Project/Area Number |
08871013
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
守 一雄 信州大学, 教育学部, 助教授 (30157854)
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Keywords | 記憶変容 / 偏光フィルタ / ビデオプロジェクタ / 見まちがい / 話し合い / 共同見解 / 大学生 |
Research Abstract |
平成8年度は、本研究プロジェクトの2つの目的のうち、「明るい大きな画面を用いて目撃者の記憶変容を調べる」ことを中心に実験研究を実施した。 本研究では、まず光量の大きいプロジェクタ(YOKOGAWA VIP40002台)を用いて、明るい大きな画面で、守ら(1996)の実験の再現を試みた。大学生30組60人を15組ずつ(a)「ビデオを見た後話し合いをし、共同見解を作成する条件」と(b)「ビデオを見た後話し合いをするが、共同見解は作成しない条件」に分けた。用いたビデオは、前研究で用いられた架空の犯罪場面を撮影したものであった。 その結果、画面が暗く小さい前研究(守ら(1996))とほぼ同様に、明るく大きな画面でも、偏光フィルタの働きで「見まちがい」を実験的に生じさせることができた。また、以下の3点が確認された。 (1)被験者は話し合いによって再生成績を向上させた。2人の目撃者の視点のずれが存在し、お互いに記憶を補い合って、出来事全体像に近い記憶が形成されるのである。 (2)話し合いをしただけの条件に比べて、「共同見解」を形成させた条件の方が、意見の同調や変化が多かった。つまり、自分の見たことと違う見解を受け入れるためには、話し合いだけでは不十分で、「共同見解」を形成する必要がある。 (3)前研究(守ら(1996))と違って、明るく大きな画面では、「見まちがい」を実験的に生じさせることはできたが、情報がより明確になるために、元情報に対する記憶に優れ、前研究に比べ、話し合いによる記憶の変容は起こりにくくなった。
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