1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08871018
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
越川 房子 早稲田大学, 文学部, 助教授 (80234748)
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Keywords | 無我 / 自己 / 自我 |
Research Abstract |
1.「無我」に関わる記述の整理と検討:昨年に引き続き、心理学と禅宗に関する文献を中心に収集し、「無我」「自己・自我」に関する資料作成と整理を続行中である。 2.「無我」関する実証的検討:昨年までの資料の分析から、「無我」を支える重要な思想として「縁起」があり、そこでは現象を一時的で非不変的なものとして観ること、を強調することがわかった。そこで今年度は、自我関与が強くなる「自分の成功や失敗」をとりあげ、その原因を一時的で非変的なもので説明する程度が高ければ無我的要素も強いと仮定し、これを測るための質問紙を作成した。この質問紙を大学生に実施し、分析結果を学会で発表した(日本性格心理学会第6回大会(1997)発表論文集p.50:「『無我』の測定可能性について」)。 3.西洋的な自己・自我と日本の自己・自我に関わる実証的検討:欧米的な自我の重要な機能の一つに防衛機制があり、防衛機制を測定するテストとしてLife Style Indexが用いられている。しかし欧米で開発されたテストをそのまま日本人に適用することはできない。そこで、このテストの日本語短縮版の作成と標準化を試み、その成果を学術雑誌「健康心理学研究」に発表した。また、自我意識の強さから生ずる精神的症状の一つにコミュニケーション不安があり、この不安を測定するテストとしてPRCAが用いられている。自我を強く育てることを中心におくアメリカと、さらに自我を棄てて無我となるという伝統をもつ日本とで、コミュニケーション不安には違いがあると想定される。そこで両者の類似点と相違点の検討を含めて、PRCAの日本での妥当性について検討し、その成果を学術雑誌“Japanese Psychological Research"に発表した。今後、これら2種のテストを用いて、無我的要素の強い人の防衛機制とコミュニケーション不安のあり方についての分析を予定している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 鈴木平・依田麻子・越川房子 他4名: "Life Style Indexの日本語短縮版の作成および標準化の試み" 健康心理学研究. Vol.10 No.2. 31-43 (1997)
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[Publications] C.B.Pribyl, J.A.Keaten, M.Sakamoto & F.Koshikawa: "Assessing the cross-cultural content validity of the PRCA-24." Japanese Psychological REsearch. Vol.40 No.1. 47-53 (1997)