1996 Fiscal Year Annual Research Report
自然保護運動をめぐる山村文化の創造と再編に関する実証的研究
Project/Area Number |
08871036
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉村 和彦 福井県立大学, 経済学部, 助教授 (40211982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鹿取 悦子 島根大学, 生物資源科学部, 助手 (30273923)
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Keywords | キーパーソン / ライフヒストリー / 自然保護 / 芦生原生林 / エコツアー / 白神山地 / ″緑″の価値 / 山村 |
Research Abstract |
本研究について一年次は、美山町の芦生原生林に関しては、主として「芦生原生林を守り生かす会」の自然保護運動をめぐる関係者や美山町内のキーパーソンのライフヒストリーの把握に焦点を当てた調査を行ってきた。一方白神山地に関しては、関連町村の自然保護運動への取り組みの地域差に着目しながらその展開過程を検討してきた。これらの調査、検討により山村において自然保護運動を行っていくことの地域内部での意義づけが、運動の展開とともに、より広い意味をもつようになつたことが、以下のような点から明らかになってきた。一つは地域住民の中での、地域資源、とりわけ自然資源の再評価とその価値の意識化という方向での展開である。二つ目は、以上のこととも関連することであるが、エコツアーなどのガイドや、エコツアー用の宿泊施設など新たな仕事と事業が生まれ、地域の内部に「自然を生かして生活する」ひつの層を作り出していることである。三つ目は、上記二つの気運が、都市と山村住民の間の交流をこれまでにないかたちで押し広げ、そのことが同時に山村住民の自然保護の自覚を下支えするという関係を作り出していることである。 このような<自然保護>的価値の担い手の山村内部での定着化とそのひろがりは、住民の生活世界の変容を引き起こすとともに、山村の今日の文化変容の中に変容の核を作り出している。そしてとりわけ都市の住民との連帯の中に意識化された″緑″の価値は、これまでにないかたちで住民の間に山村に生きること、あるいは生き続けることの積極的な意味を創り出し始めているといえよう。これらの山村内部の自然保護論者が、山村地域全体に見られる、村おこし事業、農村活性化運動の中で、どのような位置を占めるかを具体的なデータによって位置づけていく作業は二年時以降の重要な課題である。
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