1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08871039
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小口 雅史 法政大学, 第一教養部, 教授 (00177198)
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Keywords | 防御性集落 / 高地性集落 / 空堀 / 蝦夷 / 北方史 / 高屋敷館 |
Research Abstract |
1 近年ようやく注目されはじめた北日本に特有と思われる防御性集落の実態を解明するために,北海道や青森・秋田・岩手の各県の関連遺跡の現地踏査とデジタル撮影を実施した。また銀版写真についてはフィルムスキャナーでデジタル化して資料の集積を進めた。さらに立地条件を検討するために,昭和20年代に撮影された米軍の空中写真をも利用した。その結果,こうした特異な集落の立地には大きくわけて,低平台地の先端部を利用して空堀で区画するパターンと,高地上を利用して空堀で区画するパターンの二つがある可能性が高くなった。これは弥生時代の戦乱期に誕生した高地性集落との関連を示唆しているものと現在のところ理解している。 2 各地の遺跡の年代観の検討を進めたが,おおむね10世紀から11世紀の間に収まるもののように思われる。 3 防御性集落自体についても遺物の分析を開始したが,鉄などの生産遺構が目立つように思われる。ただ内部には農業生産の痕跡がないので,空堀の外側に存在したものと思われる農地との関連をも明らかにしていかなければならないと考えている。 4 こうした特異な集落がなぜ北方世界のこの時期に誕生したのかについて,仮説的に種々の原因を挙げてみたが,これについてはさらに東北南部の政治情勢との関係をも考察していく必要があるものと思われる。
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