1996 Fiscal Year Annual Research Report
帝国の周縁から見る19世紀英文学(ユダヤ人,「ジプシー」,アイルランド人)
Project/Area Number |
08871051
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
内海 智仁 岐阜大学, 教養部, 助教授 (00185050)
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Keywords | 英文学 / 周縁 / ユダヤ人 / 「ジプシー」 / アイルランド人 |
Research Abstract |
本研究は、ユダヤ人、「ジプシー」、アイルランド人などの、非定住民や周縁に位置する人々に焦点を合わせて、19世紀英文学に新たな見方を提供する試みである。「大英帝国」の形成とともに、ますます周縁に追いやられていった人々に着目し、いわば「周縁」の側から19世紀英文学の見直しを行うものであり、さらには、帝国(中心)対周縁という二分法そのものの問直しへと向かうことを目指している。また、非定住民や周縁人が、19世紀末以降のアイルランド文芸復興運動や20世紀のモダニズム文学へとつながる重要なモチーフであることも明らかにしてゆく。 平成8年度は、主に、19世紀英文学の作品テクストにあらわれる周縁性を綿密に調査し、分析していった。具体的には、マシュー=ア-ノルド、ジョージ=ボロウ、ジョージ=エリオット、ベンジャミン=ディズレイリ、アンソニー=トロロープなどの詩、小説、評論等を読み進めて、周縁人への彼らの関わり方の度合やその時間的変化、テクスト間の(英国という枠をしばしば超えた)影響関係を調べた。例えば、「ジプシー」のモチーフは、セルバンテスの短篇に始まり、ボロウの作品を通じてメリメの「カルメン」へと続き、さらにバルフのオペラを通じてジェームズ=ジョイスの作品にまで流れ着く。「マラ-ノ」と呼ばれるユダヤ人の問題も同様である。(こうした点についての研究成果の一部は、6月に行われた日本ジェームズ=ジョイス協会の年次大会において、「ジョイスと「ジプシー」」と題して、口頭で発表した。) 平成9年度は、19世紀英文学の作品分析を、フェミニズム批評やポスト=コロニアル批評を取り入れながら続行すると共に、アイルランド(人)により重点を置いた研究を行う。
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