1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08871052
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
滝川 睦 岐阜大学, 教養部, 助教授 (90179573)
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Keywords | 英国ルネサンス演劇 / 身振り学 / Shakespeare |
Research Abstract |
本年度の研究業績は、(1)身振り学的視座からのShakespeareの劇作品分析、(2)ルネサンス期演劇において表現される身振りとemblem booksに描かれた図像との関連性についての研究、(3)身振り学的視座から実践された従来のルネサンス演劇批評の検討、に分類される。(1)に関しては、Twelfth Night(1601-02年)の登場人物の身振りは、OvidのMetamorphoses(1567年英訳)のActaeonとDianaのそれによって、さらに、Timon of Athens(1607-08年)の主人公の身振りは、パジャントの野人のそれによって規定されていることを検証した。(2)に関しては、A.AlciatoのEmblemata(1550年)、G.WhitneyのAchoice of Emblemes and Other Devices(1586年)、C.RipaのIconologia(1593年)などの図像集によってコード化された図像の「身振り」と、ルネサンス期演劇における登場人物の身振りとの関連性について考察し、それらのコード化された身振りと、J.BulmerのChironomia(1644年)でカタログ化された雄弁家の身振りとを比較・検討した。(3)に関しては、B.L.JosephのElizabethan Acting(1951年)、D.BevingtonのAction is Eloquence(1984年)などの研究書を中心に検討・考察した。前者は、“Action"という言葉を核に、ルネサンス期雄弁術で用いられた身振りと、俳優のそれとの関連性を論じたものであるが、コードから逸脱する身振りについては、Josephの方法では分析不可能であること、Bevingtonの研究に関しては、中世の道徳劇からルネサンス演劇にいたる戯曲テクストに表象された身振りを帰納的に論じたものであるが、戯曲テクストとそれをとりまくコンテクストとの関連について論じられていないことが難点として挙げられる。以上のような欠点を補うための研究の方法論を、J.R.RoachのThe Player's Passion(1985年)で用いられた方法論を参考にしながら、構築すべきことを検討した。
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