1996 Fiscal Year Annual Research Report
カチオン性シッフ塩基マンガン(III)錯体の光増感DNA切断能に関する研究
Project/Area Number |
08874079
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
藤井 有起 茨城大学, 理学部, 教授 (50007564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高妻 孝光 茨城大学, 理学部, 助教授 (50215183)
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Keywords | マンガン / 錯体 / DNA / 切断 / 光増感 / シッフ塩基 |
Research Abstract |
1.5,5'-位にトリメチルアンモニオメチル基を導入したカチオン性サレン型シッフ塩基(N,N'-ブリッジ=(CH_2)_2,(CH_2)_3,C_6H_4)を配位子とするマンガン(III)錯体(N,N'-ブリッジ=(CH_2)_2:1,(CH_2)_3:2,C_6H_4:3)を新規に合成した。錯体3の3Br^-塩のX線構造解析を行い,トランス(2Br)-型6配位構造を決定した。なお,この錯体の軸配位子は水溶液中では水に置換されることをUV-visスペクトルにより確認した。これら錯体は水中で可視光照射(150W)すると,中心金属がマンガン(II)に還元されることを見いだした。酸化還元電位E_<1/2>(Mn(III)/Mn(II))はほぼ0Vvs.SCEであった。なお,この光反応では酸素の発生および過酸化水素の生成は認められなかった。 2.これら錯体によるファージΦX174DNAの可視光照射下での切断について検討した。その結果,これら錯体は室温下でDNAを効果的に切断することが分った。その切断能を電気永動実験によりForm IIの生成量などから評価した結果,錯体の活性は2<1≪3となり,この活性は錯体がマンガン(II)に還元される速度の順に一致した。このことから,DNAの切断は錯体の光照射によるMn(III)からMn(II)への還元に伴う酸化反応によることが示唆された。最適pHは約8.5であった。この光DNA切断はカチオン基のないMn(III)-サレン系錯体では起こらないことから,錯体がDNAを切断するのに,カチオン基が重要は役割を果たしていることが分かった。本錯体によるDNAの光切断速度は光量,錯体濃度,溶液pH,温度などの種々の要因に依存するが,錯体3によるDNAの光切断はかなり速く,今後,光療法などへの応用が考えられる。現在,反応後の錯体の構造や錯体の酸化還元機構,および切断DNAの位置選択制などについて検討中である。
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