1996 Fiscal Year Annual Research Report
シマリス初代培養肝細胞を用いた冬眠特異的タンパク質の発現調節機構の解析
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08874121
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Research Institution | Kanagawa Academy of Science and Technology |
Principal Investigator |
大津 敬 財団法人神奈川科学技術アカデミー, 近藤プロジェクト, 研究員 (10270696)
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Keywords | 冬眠 / 初代培養肝細胞 / チロキシン / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
冬眠特異的蛋白質(HPs)の血中量は、活動期のシマリスで高く、冬眠期のそれではほとんど消失する。活動期のシマリスから確立された初代培養肝細胞では、培養上清中にHPsが見られるが、冬眠中のシマリスから確立された初代培養肝細胞において、HPsが発現するかどうかを確かめた。分散後1日目には発現が見られなかったが、2日目以降培養上清中への分泌量が増加し、7日目には、ほぼ活動期のシマリス由来の細胞と同程度のHPs分泌が観察された。このことから、冬眠中のHPsの発現抑制は継続的な抑制因子の働きかけが必要と考えられ、この因子がなくなれば、抑制が解除されることが予想される。多くの物質の中からシマリス初代培養肝細胞でのHPs発現に影響を与えるものを探す方法の一つとして、既製の神経伝達物質、ホルモン類、サイトカイン類、計38種を培養液に添加し、HPsの培養液中への分泌量をウエスタンブロット法により比較した。その結果、これまでに抑制的に働くことがわかっていたチロキシンに加えて、抑制的に働くものとしてPTH、TSH、プロラクチンが、促進的に働くものとしてテストステロン、コルチコステロン、TRHが新たに見出された。これらのうち特に作用の強いチロキシン(コントロールの1/4以下)とテストステロン(コントロールの2倍以上)を添加した細胞についてノーザンブロット法によりHP-25遺伝子のmRNA量を調べたところ、HPs分泌量の変化はmRNA量の変化によることがわかった。 また、来年度に行う予定の血漿に含まれるHPs発現を調節する因子の検索の準備のため、覚醒中、冬眠中のシマリスの血漿を集めた。
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[Publications] Takashi Ohtsu: ""Adaptations to the Cold"eds.Geiser,Hulbert,Nicol." University of New England Press, 357-362 (1996)